転移先で砂漠の王子に愛されています

梅花

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1章

136話 彼の地へ カイル視点

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 執務室へと移動。
 冒険者ギルドが肩代わりしている俺の借金をハイネ領主が全額支払うという念書を書いてもらい、書類を作成。

「これでよいか?」

 ヘイゼルの言葉に俺は黙って頷く。
 金額は一切、言っていない。
 むしろ、ヘイゼルが金額に関しては聞いて来なかったので俺は黙っている。

「それじゃ俺は帰るので、また何かあったら依頼してください」
「分かった。君には世話になった」
「いえいえ。こちらこそ――」

 数十億もの、俺の借金を肩代わりしてくれるとは、俺こそ大変に世話になった。
 頑張って返済して欲しいものだ。
 俺は、借用書を無くさないようにアイテムボックスに入れつつ、部屋を後にした。

「マスター、話は終わったのか?」
「ああ、エミリアも疲れただろう?」
「――いえ。私は……何の役にも……」
 
 今回、水竜の討伐や皆月茜の件といい、エミリアは殆ど戦闘に参加できていない。
 その事を気に病んでいるのかも知れない。

「大丈夫だ。水竜も元・勇者であるサキュバスクィーンも、それぞれ次元の違う強さの化物だったからな。普通の冒険者では、誰も戦いについてこられないだろう」
「――でも、私……。完全に足手纏いに……」
「なら、妾が鍛えてやってもよいぞ? 亜人を鍛えるのは得意であるからな」
「本当ですか?」
「うむ。マスターだと次元が違いすぎるからの。妾くらいが丁度いいじゃろうて」
「それでは、リオンさん。お願いします」
「うむ」

 どうやら、リオンが空気を読んでエミリアを鍛えることにしてくれたようだ。
 なら、あとはする事は一つだけだな。

「エミリア、リオン」
「はい」
「マスター、なんじゃ?」
「まずは急いでハイネ領を出るぞ」
「――え?」

 エミリアが首を傾げるが、いまはハイネ城に居るので詳しく説明する時間が勿体ないというかサッサとトンずらしたい。

「とりあえず、宿に戻るぞ」
「分かりました」

 俺が、この場で事情を説明出来ない事に気がついたのか、エミリアは頷いてきた。
 すぐに用意された馬車に乗り、宿まで戻ったあとは、支払いを済ませて宿を引き払う。

 そして――、サキュバスに踏み荒らされた市場で水や食料を買いこんだあと城門へと向かう。

「もう行くのか?」

 辿り着いた城門で俺に話しかけてきたのは老兵のセイガル。

「ああ、リーン王国の王都まで行かないといけないからな。仕事が詰まっているから、ゆっくりしている時間がな……」
「それなら、今度、暇な時に立ち寄ってくれ。若き英雄に色々と聞きたいからな」
「時間があったならな」

 俺は、セイガルの言葉に肩を竦める。
 そして――、開いた城門からハイネの街を出た。

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