【ＢL】水属性しか持たない俺が得た幸福の日々

あの頃へ 10 ラーシュ×リアム

苦しいけれど愛おしい熱さ。
静かに涙するラーシュの頬に触れた。
「ラーシュ、初夜よりは上手くできたか？」
恋人同士だったあの頃。
人目を忍んで夜の森で抱き合ったのは、未だに鮮やかに記憶が甦る。
どちらも慣れた行為ではなかったから、こうして身体を繋げるまでにも時間がかかり、気が急くのもあってなかなか上手くいかなかった。
「あの頃は、互いに若かったな」
クスクスと笑うと、ゆらりとラーシュの腰が動いた。
「っ……」
「怖いか？」
ラーシュの声に頭を降る。
「お前にされて、怖いことなどあるものか」
ただ１つ、毒に侵され倒れた姿を見て置いていかれるかもしれないと思ったときには恐怖を感じたけれど。
「だから、お前がしたいようにして構わない……過去も、未来もそれを許すのはお前だけだ」
頬へ触れて、その少し骨張った顎から喉へかけて唇を振れていく。
「そうか」
静かに頷いたラーシュは、ゆっくりと腰を進めてくる。
少しの間はまだ大丈夫だったが、身体が快楽を思い出すとそれ以上は何も考えられなくなってしまう。
「は……あ」
部屋の中は互いの吐息で満たされていく。

「ラーシュ……」
「どうした」
「戻りたいか？」
「いや、あの頃へはもういい。今が全てだ」

しっとりと濡れた肌が重なりあい、甘やかな言葉を紡ぐ。
これからどのくらいの月日を共に過ごせるか。
あの頃を思い出すよりもこれからを思い描く幸せを手に入れたのだ。