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あの頃へ 3  ラーシュ×リアム

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「先に湯を使え」
ラーシュが外套を外して砂を落とした。
流石にそれはと苦笑した。
「流石に家主を差し置いて、先には無理だ」
「ならば、一緒に入るか?広さもそれなりにあるからな」
確かに。
直轄地としてあった頃から、この街は保養地としても使われており、王族が宿泊できる設備もあったのだ。
「ほら、遠慮するな」
ガシッとラーシュに肩を掴まれると、こっちだとばかりに引き寄せられた。
脱いだ外套は侍従だろう、綺麗な青年が二人分を受け取った。
慣れた足取りで廊下を進むラーシュ。
それもそうだろう、此処はラーシュの屋敷なのだから。
「リアム、部屋は此処を使え。俺の部屋の隣だ何かあれば気が付くし、家令たちも部屋が近ければ掃除などもしやすいだろうしな」
ポンと渡されたのは、真鍮の鍵。
「必ず鍵は掛けろ」
「あぁ」
王宮ですら、鍵の風習はあまり無い。
「とりあえず、案内は風呂を出てからだな着替えは持ってこさせるが……本当に凄い格好だな」
ラーシュが笑う。
その理由は浴室の鏡を見た瞬間、わかったのだった。
強い風と陽射しからか髪は傷み、毛先があちらこちらを向いている。
「酷いな」
「お互い様だ、ほら介添えしてやろうか?」
「自分でできる」
王になり、何をするにも他人の手が行っていた事を今は自分でしなければならない。
服を脱ぐくらいできると、腰のベルトを外した。
ラーシュは一足先に全裸になると、先に行くぞと湯槽に向かっていく。
その、鍛えられた後ろ姿に未だに剣を置いていないことを知る。
若かったあの頃よりも更に鍛えられたその身体は弛む所もなく鋼のように見えた。
それと同時に、自分はどうだろうか。
鍛練は欠かさなかったが、きっとあの時のような若さは無い。
ラーシュに言えばお互い様だと言われるのはわかっている……が、ラーシュが私を呼んだのはそんなつもりではないのかもしれない。
旅の間もそんな素振りは微塵も見せなかったのだ。
「私だけか」
そう、無意識に呟くと深呼吸をしてから湯槽へと向かう。
そこにあるのは床をくり貫いてお湯を張った広い湯槽だった。
「先に入ってるぞ」
手を上げて見せたラーシュに頷き、自分も軽く身体に湯を掛けてから足から浸かる。
熱すぎず、熱風で火照った身体を冷ますにはちょうどいい温度だった。
「テトが来た後から、竜神の機嫌が良く水には困らなくなった」
だから、こうして贅沢にも風呂に入れると言われ、王宮では普通にしていたことに気付かされた。
「そうか、ならカイルの判断も間違っていなかったな」
ゆっくりと肩までお湯に浸かると、我慢していた疲れが一気に抜けていくような気がした。
目を瞑ると、眠ってしまいそうな暖かさ。
掬ったお湯でざばりと顔を洗っていると、いきなりラーシュに腰を掬われた。
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