【BL】水属性しか持たない俺が得た幸福の日々

梅花

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あの頃へ 2  ラーシュ×リアム

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ラーシュが騎士団長を退いたのは、俺に代わって毒を飲んだからだ。
一時、生死の境を彷徨い目が覚めた時には片足と指先に痺れが残ってしまい、日常生活には困らないが、細かい作業をするときや剣を握ることは難しくなった。
それを誰にも気づかれることなく年だからと周囲の意見を一蹴して退役した。
その、報酬として辺境伯として直轄地を下げ渡した。

「今もか」

何がとは言わない。

「当然だろう……」
「そうか」

お茶を口にし、目を伏せる。
思い出すのは昔の事ばかり。
年をとったなと笑みが溢れた。

「リアム……俺と来るか?」

数年前にも言われた言葉。

「只人だぞ?」
「王になる前もそうだっただろう」

王となるつもりもなかった若かりし頃、私はラーシュと情を交わしていた。
それは、王にまつりあげられた時に終わりを告げた。
王妃を娶り、子を成す義務があるからだ。
血族を絶やすことは罷り成らぬ。
そのしきたりに随分と縛られて苦しめられた。
血を吐く思いで決断して王妃を迎えて子を儲けた。
今の王であるカイルを産んでから数年後、再び子を孕んだ王妃はその子を産むこと無く命を散らした。
二人めを迎えろと言われたが、それはできなかった。
自分を偽ることができなかったからだ。
だから、善き父であり、善き王であろうとした。
そしてカイルに伴侶ができたと言われた時に、漸く肩の荷を下ろすことができたのだ。

「もう、若くない」
「俺だって同じ時を生きているのだから当然だ」
「……っ」
「リアム、何も言うな俺のものになるのなら、ただ手を取ればいい」

差し出されたラーシュのゴツゴツした大きな手。
剣を握っていた時の硬くなった部分は今もまだ残っている。

「ラーシュ、お前は変わらないな」
「リアム……」
「行こうか……お前と」
「そうか」

私の返事を聞くと、今までに見たことが無いくらい、幸せそうな笑みをラーシュは浮かべた。
それから、慌ただしい日々が始まった。
何もすることは無いと言ったが、カイルもテトも不便が無いようにと支度を整えてくれた。
ラーシュは、身一つでいいと言ったが、流石に長い距離を馬で行くのだ、テトが随従するといい始めた時は流石に止めたが、落ち着くまでは上へ下への大騒ぎだった。
そして漸く支度が整ったある日、ラーシュと一緒に王都を発った。
テトに持たされたいくつもの石。
それは水には困らないようにと。
そして、ラーシュの肩には小さな小さな竜神が乗っていた。
新しく産まれた子らしい。
まだ、言葉を話す事はできないが、旅の途中で目的地を見つけたら自然と其処へ留まるだろうと。
それまでは皆を暑さから護ってくれると聞いた。

「行くか」

久し振りの騎馬だななどと思いながらも、ラーシュと馬を並べて進ませる。
これからが楽しくなりそうだと未来に思いを馳せるのは、本当に久し振りの事だった。
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