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バレンタインデー カイテト

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アルーディアにはチョコレートが無い。
理由は簡単で、溶けるから。
恋人にチョコレートを贈る日と言うのがあったのだとカイル様にずっと前に話したのを俺はすっかり忘れていた。

「テト…これを」

カイル様が差し出してきたのはカップに入ったそれ。
くるくるとかき混ぜるスプーンが入っていて、ほんのりとあたたかかった。

「チョコレート?」

ふわりと立ち上るカカオの香り。
カカオの木は至るところで見るし、珍しいものでもなかったから、何故?と、首を傾げた。

「こほん…恋人にチョコレートを渡す日、なのだろう?」
「えっ!?」
「違ったか?」

今日の日付を確認して俺は驚きを隠せない。

「覚えてくださっていたのですか?」

まさかとカイル様を見上げたら、こくりと頷いた。
でも、俺は何も用意していない。


「あの、俺…」
「まずは飲んでみてくれ。美味いかどうか…」

ホットチョコレートのような、ココアのような軟らかく優しい風味だった。
カイル様は隣に座り、ニコニコとしている。
俺はこくりとゆっくりチョコレートを嚥下すると、ほうっと息を吐き出した。

「美味しい…」
「そうか、良かった。
テト、唇についている」

カイル様に腰を引かれ慌てて溢さないようにカップを両手で支えると、カイル様の唇が唇に触れてぺろりと舐められた。

「ひゃあっ!」
「甘い…な」

口元を押さえようにも両手はカップで塞がれている。
いきなりのことに俺は慌てる。
どんなに一緒にいても慣れないのだ。

「テト、俺もチョコレートが欲しいのだが?」

カイル様が自分の唇を指差してから、ちろりと赤い舌を出した。
その意図を悟って、俺の顔は益々赤くなる。
震えてしまう指先で、掴んだカップを自分の唇にあてて一口だけチョコレートを含む。
甘くとろりととろけるチョコレートを含んだ唇をそっとカイル様の唇へ。
手にしたカップはカイル様に取り上げられて視界の外のテーブルに置かれたようだった。
薄く開いたカイル様の唇から差し出された舌に自分の舌を少しだけ絡めると、いつものように口内へ導かれる。

「んっ…ふ」

カイル様が甘いのかチョコレートが甘いのかわからなくて、思考回路が止まりそうになる。
そうなればなすがまま。
また今日も流されるのだった。



☆☆☆☆☆☆☆

バレンタインデー
たぶんそういうイベントは無いのでしょうが
これがやりたくて書きました。
ホットチョコレートのイメージでお願いします。
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