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21話

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シルヴィアの口車に上手くのせられたような気がしながら、美南はベルゴッドと同じ部屋に他の部屋が空くまでという条件付きで入ることになった。
本当は凄く拒否をしたかったのだが、ベルゴッドの強い頼みで美南も頷くしかなかったのだ。

「ミナミこれはどうする?」

次から次へと買ったものが運び込まれる。
服やアクセサリーだ。
それに、シルヴィアからは化粧道具等も一式。
細々した日用品も貰った。
ベルゴッドの声に顔を上げると、まだまだ箱が積まれていく。
運んでくれるのはベルゴッドで、廊下までは騎士団の人が運んできてくれているらしい。
服も何故か普段着だけでなくドレスに近いワンピースなど、試着すらしていないデザインの物まで持ち込まれている。
慌ててベルゴッドに言うも、気にするなと一蹴された。
何が気にするななのかは美南には全くわからなかったが、返せと言われても大丈夫なように箱からは出すが、袖を通さない方に決めたクローゼットに入れた。

「もう入りませんよ!」

片付けても片付けても減らない箱に、美南はいい加減切れ気味に叫ぶと、帰ってきたシルヴィアに盛大に笑われた。

「兄さんやり過ぎよ」

やっぱり、見たことのない服はベルゴッドのせいだったらしい。

「ベルゴッドさん、ちょっと来てください……そしてそこの床に正座です」

美南は自分の足元を指差し低い声で告げる。
流石に温厚な美南でも堪忍袋の緒が切れる。
ひえっと一瞬飛び上がったように見えたベルゴッドはすごすごと正座をして……この世界にも正座という文化があることにすら美南は怒りで気付かなかったのだが……項垂れつつ、30分ほど美南のお小言を聞かされるのであった。

「もう、いいですけど、これ返品できませんか?」
「できない。いらないなら捨てるしか……ない」
「……全部着るの凄く大変だと思います、けど、ありがたくいただきますが、これ以上はご遠慮します」

きっぱりと美南は言い切ると、それでもありがとうございますと頭を下げた。
さらりと黒髪が揺れる。
その髪の一房を掬い上げてベルゴッドは口吻ける。

「なっ!」
「ミナミが嫌だと思うことはしないように誓う」

その所作に美南は真っ赤になる。
流石騎士、格好良い。
それに、現代でそんなことをするのは小説の中か、執事喫茶の執事くらいだと思いながら顔を両手で覆うと溜め息を吐くのだった。
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