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8話

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まずは食事だとソファーに座らされた。
たっぷりと言っていいほどの料理がのせられている。
昨夜から食べていないからありがたい。
けれど、これはどう見てもひとり分?

「これ、私が食べたら困りませんか?貴方の分は?」
「あー…騎士団の食事数は決まっているからな。まぁ、俺は食わなくても大丈夫だから」

向かいに座った男は何故かニコニコと笑っている。

「それはいけません!朝の食事は1日を作るんですから…私はパンと少しだけサラダをいただきますから、残りを食べてください」
「いや、大丈夫だから」
「駄目です」

そんな押し問答をしてから美南は溜め息を吐いた。

「はい、あーん!」

口を開けろと指示すると、男は無意識にぱかりと口を開け、その瞬間に美南が切ってある切ってあるグリルチキンをフォークごと口に突っ込む。
んぐっと、変な声が漏れたが気にしない。
相手の口からフォークを抜くと、遠慮なく自分もサラダを食べた。
みずみずしいサラダには酸味の強いドレッシング。
食べにくい野菜はなく、この世界の食事はあまりあちらとは違わないようだった。
パンも半分くらい貰う。
トーストにジャム。
たっぷりとジャムをのせて相手に渡したが、甘いものが苦手なのかトーストを受け取るも口にしないため、それは美南が貰うと、何も乗せないトーストを渡したら、パンの耳からかじっていた。
ふぅん、甘いのは苦手みたい。

「わ、さっくりしていて美味しい」

かりっと焼いたパンの匂いが鼻孔をくすぐる。

「はい、野菜も!食べさせづらいから隣に来てください」

3人は楽に座れるソファーの隣をパンパンと美南は叩いて相手を促す。
次が食べたいのだ。
流石にひとり分しかないと言われればはいそうですかと遠慮なく食べられるわけがない。
おずおずと大きな身体を隣に沈めた男にスプーンとスープ皿を促した。
透明な澄んだスープにクルトンだろう四角いものが浮いていて、絶対に美味しい奴だろうけど我慢。
パンとサラダだけでも食べられるだけ良しとしなきゃ。
で、さっき言っていた仕事の件は本気なのかなぁ…知らない人間を雇っちゃ駄目だよねぇ、。
まぁ、あのブラックよりはまともそうだけど…
とりあえず、悲しかったりイライラしたりした気持ちは消えたから、食べ物って凄いね!
そう思いながらサクサクと、サラダを口に詰め込んだ。
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