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6話

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「ごめんなさい、朝…ですよね?」

抱き締められていた相手の胸を押すと、みっしりとした筋肉に押し返される。

「着替えて行きますから」

行く場所など無いけれど、此処には居たくない…。
目を擦ってから脱ぎ散らかしてあった服を探しながら身に纏う。
掛けて貰ったガウンをシャツと取り替えてから袖を通す。
震える指先がこれからの不安を表しているのだろうか。
上手くとめられないボタンをどうにかこうにか1つずつ嵌めてから、スカートを探す。
下着は身に付けていたけれど、ストッキングが無い。
靴も…?
辺りを見回していると男と視線が合った。
ぼーっとこちらを見ているような気がして慌ててスカートを履いた。
膝丈のタイトスカート。
本当はプリーツスカートやマキシ丈のスカートが好きだが、会社にはそぐわないと出勤はスーツが多かった。

「ちょっと待て!そんな格好でいたのか!?」

男が声を上げる。
少しだけ悲鳴にも似た声だ。

「女性が足を出すなどと…」
「はしたない…ですか?ですが、これは私の服ですから…」
「新しいものを用意させる!食事も持ってくるから、それが用意できるまではこの部屋にいてくれ…直ぐに支度をするからな?いいな」

そう言って男は下着やズボンなどをひっつかむとズボンを履いてからシャツを着ながら部屋を出ていった。
もっと見た目は静かそうな人なのに…
ちょっぴり可愛いなと思いながら止まっていた着替えを進めた。
あの話ぶりからこの世界では女性が足を出すのははしたないらしい。
中世のヨーロッパのような感じなのだろうか。
胸の谷間は見慣れているが、足首を見せるのは親しい人にだけ。
確かそんなことを何かで読んだ気がしたが、良くは覚えていないけれど。

くうっとお腹が鳴る。

「あ」

そう言えば、お昼の後に夕方プロテインバーをかじったくらいで何も食べていない。
美南は燃費が良くない。
考え事をするときも脳が糖分を欲するし、定時になればお腹が空く。
他の女性の倍ぐらいはぺろりと食べるがそれなりの体型だ。
貧相ではなく、出るところは出ているし、引っ込むところは引っ込んでいるが、その出ている部分が嫌でダボッとした服を好むため、ふくよか体型だと思われていることが多かった。
流石に面と向かってデブと言われたことは無いけれど…

「食事…貰ってから行こうかな…次に食べられるのいつになるかわからないし」

何処かに鏡でもないかななんて部屋を見回したが、何がなんたかさっぱりわからない。
机の上の書類は、何故かカタカナで書いてあった。
読みづらい…けれど、読めなくはない。
言葉の意味は同じそうだななんて思いながら靴を探すも、美南の靴は片方も見つからなかった。
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