【完結】【ＢＬ】空と水の交わる場所～anothersidestory

癒し アイヴィス④

最初は、鈍い痛みだった。
それから、軽い痛みになって
温かくて心地よくなってきた。

穏やかな声も耳に心地好い。

ふわりと鼻孔を擽る少し甘めの香りも心が落ち着く。



先日の執務放棄…いや、あれは認められているはずだ。
をしてから戻ると、頭が痛くなるほどの書類の山ができていた。
全て御璽が必要なものなのだと。

セラフィリーアの助言があって、皇帝が一手に引き受けていた行いを分散させたばかりなのに。だ。
仕方無いと書類に目を通すと、どう見ても先日権限を下げ渡したものまで混じっている。
慣れないのは仕方無いが…セラフィリーアが書類の管理をしてくれていた時はもっと簡単に決裁が終わっていた。
疲れた目を休めるために俯きこめかみを指で刺激する。
ハワードがお茶を運んできてくれた。

「…宰相は無能なのか」

溢れた本音。
答えは期待していない。
筆頭侍従ですらそれを答えるには問題が生じるからだ。

「これなら、セラに頼んだ方がいい…」

もう、アルトリアに嫁いで宰相と妃の地位について、手伝って欲しい。
美人でいて聡明。
自分達では思い付かないような奇策を投じる事がある。
アイヴィスですら、なにも策がないとセラフィリーアに言葉を選んで問いを投げ掛け良い案を貰うことがある。
セラフィリーアも他国の者だからと深い事情を聞いてくることもない。
むしろ一歩下がった物言いをする。
これが自国民となったときはある意味恐ろしいとすら思える。
だから欲しい…

「ん…ぅ」


誰かが傍にいると必ず浅くなる眠りが、いきなり深くなる。

次の日の朝、身体が軽くすっきりと目覚めることができた。
セラフィリーアの優しい手に導かれたのだろう。
また、来てくれないだろうか。

そもそも、なぜこんなにもしてくれるのだろう。
優しすぎる行為に慣れてしまっていいのか…セラ。