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約束 セラフィリーア⑥
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「うわっ!」
くんっと髪が引っ張られてセラフィリーアは声を上げた
あーあ。
とうとうやっちゃったよと肩を落とす。
自分の髪が長いのがいけないのだが、先日から気になっていた。
「セラ?」
「大丈夫です、服のボタンに髪が絡まってしまったみたいで…」
「外しましょう」
立ち上がったアイヴィスに、大丈夫ですと机の中からハサミを取り出す。
躊躇いなく絡まった髪をチョキンと切ってクルクルと絡まった髪を解いた瞬間、アイヴィスが勢いよく立ち上がる。
「なっ!」
絶句してこちらを凝視してくるアイヴィスにおやと首を傾げながら笑みを返した。
「髪を切ったのか?ボタンを外せばいいものを…」
「え、あぁ…ボタンを切ると縫い付ける時に布が傷みますし、髪はまた長くなりますから」
切ったと言っても10cmにも満たない長さだ。
それに、整えたくもあったため、まぁいいかと簡単な気持ちで切ったのだ。
「だが…」
「伸ばしていた私が悪いのです。それに、少し前から絡まるかもと思っていたのに対策を怠ったのですから」
そう言えば騎士にはあまり長い髪の人がいないなと思う。
自分も以前は短かった。
たまにはショートもいいなと思う。
似合うかどうかは別にして。
「アイヴィス様は長い髪が好きですか?」
自分の毛先を持ち上げながら、ふとアイヴィスを見る。
アイヴィスだけでなく、アスランもシュクラも髪が好きだったなとふと思った。
アスランは面倒だとは絶対に言わず洗った髪を時間をかけて乾かしてくれたり、アルトリアに来るときに飛竜に騎乗するから短く切ると言った時に猛反対をされた。
シュクラは髪を櫛削る時に抜けてしまった髪を集めて大切に取っているのを知っている。
「セラだから…長くて美しいと思う。短いのも似合うかも知れないが、私は長い方がセラフィリーアの髪なのだと思ってしまっているんだ…切っては欲しくないが…今回のように粗雑に扱っては欲しくないよ?」
少しだけ眉根を寄せたアイヴィスが可愛いとさえ思ってしまう。
「はい、せっかくアイヴィス様にいただいた綺麗な髪留めをまだ使っていませんから…あれを着けたら、今度一緒に何処かに行っていただけますか?」
「勿論だ」
離宮に帰ったらアスランに怒られるだろうけど、アイヴィスと出掛ける約束もできたし、切り落とした髪はシュクラにあげようとハンカチに包んだのだった。
くんっと髪が引っ張られてセラフィリーアは声を上げた
あーあ。
とうとうやっちゃったよと肩を落とす。
自分の髪が長いのがいけないのだが、先日から気になっていた。
「セラ?」
「大丈夫です、服のボタンに髪が絡まってしまったみたいで…」
「外しましょう」
立ち上がったアイヴィスに、大丈夫ですと机の中からハサミを取り出す。
躊躇いなく絡まった髪をチョキンと切ってクルクルと絡まった髪を解いた瞬間、アイヴィスが勢いよく立ち上がる。
「なっ!」
絶句してこちらを凝視してくるアイヴィスにおやと首を傾げながら笑みを返した。
「髪を切ったのか?ボタンを外せばいいものを…」
「え、あぁ…ボタンを切ると縫い付ける時に布が傷みますし、髪はまた長くなりますから」
切ったと言っても10cmにも満たない長さだ。
それに、整えたくもあったため、まぁいいかと簡単な気持ちで切ったのだ。
「だが…」
「伸ばしていた私が悪いのです。それに、少し前から絡まるかもと思っていたのに対策を怠ったのですから」
そう言えば騎士にはあまり長い髪の人がいないなと思う。
自分も以前は短かった。
たまにはショートもいいなと思う。
似合うかどうかは別にして。
「アイヴィス様は長い髪が好きですか?」
自分の毛先を持ち上げながら、ふとアイヴィスを見る。
アイヴィスだけでなく、アスランもシュクラも髪が好きだったなとふと思った。
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シュクラは髪を櫛削る時に抜けてしまった髪を集めて大切に取っているのを知っている。
「セラだから…長くて美しいと思う。短いのも似合うかも知れないが、私は長い方がセラフィリーアの髪なのだと思ってしまっているんだ…切っては欲しくないが…今回のように粗雑に扱っては欲しくないよ?」
少しだけ眉根を寄せたアイヴィスが可愛いとさえ思ってしまう。
「はい、せっかくアイヴィス様にいただいた綺麗な髪留めをまだ使っていませんから…あれを着けたら、今度一緒に何処かに行っていただけますか?」
「勿論だ」
離宮に帰ったらアスランに怒られるだろうけど、アイヴィスと出掛ける約束もできたし、切り落とした髪はシュクラにあげようとハンカチに包んだのだった。
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