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154話
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「サハル悪い、これ討伐の食糧一覧だがミゲル様に確認を取ってくれないか?」
「お預かりします」
分隊長のひとりであるリュカ様が紙を渡してくる。
今回リュカ様の部隊は後方支援部隊も兼ねた配属で、主な仕事は炊飯を行うのだ。
「中を確認させていただいてよろしいでしょうか」
決裁の内容を一騎士が見ることは不敬かもしれないのだが、その権限を俺は貰いミゲル様への書簡を分けさせて貰っている。
リュカ様から了承を得てから中を見させてもらい、俺は言葉を発した。
「リュカ様、まずは水源の確保が必要になります。現地の水は汚染されていると思ってください」
「そうか、ならばどうしたらいい?寒いが騎士たちに水分が無い訳にはいかないだろう?」
「水を浄化できる魔石は用意されていますか?ひとりひとつ水を詰めた水筒を持参するのは勿論ですが、疫病の根源はユキウサギの毒に汚染された水を飲む事で感染しているとありましたので」
俺は過去の記憶を引っ張り出す。
過去の討伐で何が辛かったのか、何をしなければならなかったのか。
勿論、戦うのはユキウサギだけではない。
様々な魔獣が現れるのだから。
「神殿にお願いできればいいのですが、駄目なら軍医様に毒を浄化できる方をご紹介いただくとか……」
もちろん、俺だって浄化の付与はできるが、回復と治癒両方できたらおかしいと言われるだろう。
「サハルにツテは無いのか?」
問われて考えるも、浄化だけできる医師が軍医の中に居た記憶はない。
「無いです。申し訳ありません……最近、軍医様の所にも行っていませんので、もしかしたら凄腕の浄化のできる医師が入ってきているかもしれません。後で行ってみますね」
ミゲル様に許可を貰わないとと、思いながら俺はリュカ様に頭を下げた。
ミゲル様ならまだ会議をしている事だろう。
会議が終われば執務室に戻ってくるため、探し回ったり直接会議室に行くよりは執務室に戻って他の決裁書類を片付けなければと思いながら、俺は執務室へと向かう。
執務室のドアノブに触れるとガチっと鍵が掛かっているのがわかる。
先日の事件から、しっかりと施錠するようにした。
「ミゲル様はまだですね……食事はされている……ッ」
顔の横に突き出された手。
「サハル……どうした?そんな所で立っていて」
降ってきた声はミゲル様のもの。
「お、お帰りなさいませ……俺も戻ってきたところで」
この距離になるとふわりと香るミゲル様が纏う匂い。
「入ろう。少し疲れた……」
「会議でしたから、お茶をいれましょう」
「頼む」
扉を開けて執務室に入ると、後ろからギュッと抱きしめられた。
「お預かりします」
分隊長のひとりであるリュカ様が紙を渡してくる。
今回リュカ様の部隊は後方支援部隊も兼ねた配属で、主な仕事は炊飯を行うのだ。
「中を確認させていただいてよろしいでしょうか」
決裁の内容を一騎士が見ることは不敬かもしれないのだが、その権限を俺は貰いミゲル様への書簡を分けさせて貰っている。
リュカ様から了承を得てから中を見させてもらい、俺は言葉を発した。
「リュカ様、まずは水源の確保が必要になります。現地の水は汚染されていると思ってください」
「そうか、ならばどうしたらいい?寒いが騎士たちに水分が無い訳にはいかないだろう?」
「水を浄化できる魔石は用意されていますか?ひとりひとつ水を詰めた水筒を持参するのは勿論ですが、疫病の根源はユキウサギの毒に汚染された水を飲む事で感染しているとありましたので」
俺は過去の記憶を引っ張り出す。
過去の討伐で何が辛かったのか、何をしなければならなかったのか。
勿論、戦うのはユキウサギだけではない。
様々な魔獣が現れるのだから。
「神殿にお願いできればいいのですが、駄目なら軍医様に毒を浄化できる方をご紹介いただくとか……」
もちろん、俺だって浄化の付与はできるが、回復と治癒両方できたらおかしいと言われるだろう。
「サハルにツテは無いのか?」
問われて考えるも、浄化だけできる医師が軍医の中に居た記憶はない。
「無いです。申し訳ありません……最近、軍医様の所にも行っていませんので、もしかしたら凄腕の浄化のできる医師が入ってきているかもしれません。後で行ってみますね」
ミゲル様に許可を貰わないとと、思いながら俺はリュカ様に頭を下げた。
ミゲル様ならまだ会議をしている事だろう。
会議が終われば執務室に戻ってくるため、探し回ったり直接会議室に行くよりは執務室に戻って他の決裁書類を片付けなければと思いながら、俺は執務室へと向かう。
執務室のドアノブに触れるとガチっと鍵が掛かっているのがわかる。
先日の事件から、しっかりと施錠するようにした。
「ミゲル様はまだですね……食事はされている……ッ」
顔の横に突き出された手。
「サハル……どうした?そんな所で立っていて」
降ってきた声はミゲル様のもの。
「お、お帰りなさいませ……俺も戻ってきたところで」
この距離になるとふわりと香るミゲル様が纏う匂い。
「入ろう。少し疲れた……」
「会議でしたから、お茶をいれましょう」
「頼む」
扉を開けて執務室に入ると、後ろからギュッと抱きしめられた。
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