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153話

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「一人一つですからね」
俺は取り戻した魔石を騎士たちに配る。
これから、出立の準備が始まるのだ。
「大変な任務ですがお願いします」
何とか数が揃った付与石は、ユキウサギの討伐を行う為に持ってもらう。
手を広げたぐらいのサイズのユキウサギは見た目は可愛らしいが動きが早く牙と爪には毒を持っている。
そのため、本当は毒消しも一緒に付与したいが俺が聖女だと知られるのは問題だからと、毒消しは街の薬屋から大量に購入をした。
ただ、どうしても瓶で持ち歩くのが不便でしかないが仕方無い。
「出来たら火の力を付与した石を持って行って下さい寒いですから防寒着は必須ですよ?火の石は別の列ですからねー?」
討伐に選ばれた騎士に話し掛けながらひとつずつ回復を付与した石を配っていくと足りるはずの石が足りない。
「あれ、足りない?すみませんーピッタリなはずなんですが何処かで余っていませんか?間違ってふたつ持っている方がいませんか?」
足りなきゃ急いで作らなきゃならなくて、残っている石は大振りの石なのだ。
「足りない人……十五人かな、直ぐに作りますから待ってくださいね?」
俺はポケットから出した石にその場で付与を付けていく。
「ごめんなさい、これ、自分で袋に入れてください。時間が無くて……お願いしますね?」
ひょいひょいと歩きながら次々に付与をしていくのは、過去の名残。
大聖女と呼ばれていた時は怪我をした騎士の間を歩きながら回復をさせていた。
だから、それは普通の事だと思っていたが、石を受け取った騎士たちはポカンと俺を見ていた。
「どうしました?」
「サハル、お前こんなに早く付与できるのか?」
ぽつりと聞いてきた騎士。
「立ちながらですからね、遅いくらいですよ?はい、最後ですね。それに、俺は纏めての付与が得意じゃなくて、やるとどうしても無意識にムラができちゃって……付与が効かないなんて言われたら恥ずかしいじゃないですか?」
「ムラができてるなんてわかるくらいなの……マジか」 
次々に問い掛けが起きるのを聴きながら俺は首を傾げる。
「そんなにたいした事はしてないし、俺はこのくらいしかできないから……討伐も剣では役に立つかわからないし」
へへっと笑うと目の前の騎士達は顔を見合わせる。
「サハル、ギリギリで騎士になったもんなぁ?」
「はい、辛うじてこの特殊能力で騎士にしてもらいましたから……なので、先ずは怪我をしたら来てくださいね?石を使うのはできるだけ後でお願いします」
「心強いな。聖女様は来てくれるのかわからないしな」
「そんなこと言うもんじゃない……神殿には神殿の都合があるんだろ?せめてサシャ様がいらっしゃれば違うのかもしれないが……」
「惜しいことをしたよなぁ」
口々に話始める騎士たちの会話に軽く乗りながらそっと俺は離れていく、ミゲル様の支度も必要なのだから。
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