【BL】かつて大聖女様と呼ばれていた俺は現在男ですが何か。

梅花

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143話

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「ライトで照らしてみるといい」
ミゲル様に言われ、俺はあのライトを当てると封蝋の部分がぼんやりと光を帯びる。
「わぁ……本当だ……」
「騎士団長の印章と、そのインクで間違いない俺の書簡だと証明をする。このインクは特殊で一部にしか流通していないからな……」
「小袋に使われていたのは……」
「織り糸を染める時にこの液体を使って織る場合と、布を織り上げた後に染める場合があって、今回は後者だな……わざわざその布を使ってくれて、助かった」
そう笑うミゲル様だったが、何も無ければそんな布を使うことも無い。
ミゲル様は言わないけれど、知らないところで色々とこうした気遣いをして下さっているのだろう。
布に描かれた騎士団の紋様。
何かがあった時に身に付けておけば証となるもの。
「ミゲル様、ありがとうございます」
「いや」
「書簡はこちらへ、お着替えを手伝いますね」
シャツのボタンを留めたミゲル様にベストを差し出す。
腕を通してから、俺は向かい合うようにしてミゲル様のボタンを留めた。
「悪いな……」
「いえ、俺がミゲル様のお世話をさせていただくのが嬉しいので」
ミゲル様が最高に素敵に見えるようにと、ジャケットを重ねてブーツの紐を組む。
「本当なら、サハルにも正装をしてもらうべきなのだがな……あまりにも仰々しくなってしまうからな」
どうして俺まで正装が必要なのかと首を傾げたが、思い当たる節に俺は真っ赤になった。
ミゲル様は教皇様へ書簡を持っていく為に正装をしたのではなく、お祖父様に報告をする為に正装をしたのだりうか。
「まさか……ミゲル様」
「教皇へ会うために正装をしたと思ったか?あくまでもそれはついでだ……」
「そちらがついでって……」
何を言っているんだこの人は……。
騎士団で、一番素敵だと思いながら見ていたミゲル様……。
「サハルをくださいと言いに行くのだ……首を差し出すくらいの気持ちだぞ?」
「でも、俺は実子では無く……」
可愛がって下さるお祖父様だが、血の繋がりは一切無いのだから。
「あの方は血の繋がりなど気にしない……騎士団全員があの方の子のようなものだったからな……俺にとっても父親のような方だが、やはりそれ以上に緊張するというか、怖いものはある」
ミゲル様の短い髪に櫛を入れて終わりだ。
「ミゲル様、なら、俺も制服を着ます。この気持ちをお祖父様にも知っていただきたいので……少しだけ待ってください直ぐに済みます」
ミゲル様が要らないと言った外套はそのままに、俺は自分の制服を取り出して着替えるのだった。
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