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135話

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「どうぞ、部屋を開けます」
ユスラさんが入口の扉開けてくれ、俺は一緒に部屋に入った。
何度も入ったことのある執務室。
机に向かうと預かった鍵で机を開けた。
引き出しの奥に転がったペン型のライト。
カチリとボタンを押すが明かりが点くけれど、そんなに明るくは無い。
「お借りします」
ユスラさんを見上げて頷くと、引き出しを戻して鍵を掛けた。
開かないのを確認してから鍵をユスラさんに託すと頷き、ユスラさんは首から下げたチェーンに鍵を通してまた服の下にしまった。
「サハル、私はこれから伝令に行くけれど、無理はしないでどうにもならなければ団長に……」
「ありがとうございます!」
俺はライトを握り締め、ラーシュ様の執務室から出るとユスラさんとは左右に別れた。
ミゲル様の執務室からペンを取ってこなければならないからだ。 
じゃあとユスラさんに手を振ったその向こうに、普段見ない色を見た気がした。
気のせいかもしれないけれど……。
一瞬だったから、気のせいかもしれないと思いながら俺はユスラさんにそっと耳打ちをした。
「気のせいかもしれませんが白い服が見えましたので、神殿の従者か大神官かも知れません……先程色々とありましたから、ユスラさんは会わないようにお気を付けて……」
頷いたユスラさんは振り返ると、もう一度じゃあと手を振った。
「さて、机の側面」
俺はミゲル様の執務室に入り、執務机の椅子を引くと、足元に引っ掛けるようにして下がっていた。
「あった」
俺は二本のライトを手にして今度は門へ向かう。
しっかりと施錠するのは忘れずに。
その途中、さっきの手伝いをしてくれた二人に会う。
「サハル、終わったのか?」
片方が声を掛けてくれた。
「う……ん?」
「どうした?間に合わないならもっと手伝うぜ?」
「今日の……分は終わったんだけどね……それが無くなっちゃって……」
「は?」
「もしかして、俺達疑われてる?」
二人は顔を見合わせた。
「まさかお前……」
「やってねぇよ!ずっと一緒だったろうが……」
「そりゃそうだ」
なんてやりとりをしている二人を見て、俺はにこりと笑った。
「ミゲル団長から、捜索依頼が出ていて……ただ内々になので。あと、持ち出す可能性が高いから出入りは騎士でも身体検査は絶対に行うのだと……」
「どのくらい無くなったんだ?」
「……全部……です」
「「は!?」」
二度目のは?に、申し訳なくなるが仕方ない。
「マジかよあんなにやったのに……なぁ」
「だな」
「なので、これから少しの間はバタバタするかもしれませんから……ご承知おきください」
そう言うと、俺は頭を下げてから二人から離れた。
二人がやるにはお粗末すぎる。
俺は門へ向かうと、詰所の扉をノックした。
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