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130話

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「ミゲル様、遅くなりました!」
俺はワゴンを押しながら執務室へ戻る。
今朝は会議は無いらしい。
「悪かったな」
ワゴンを止めて扉を開こうとして、内側から扉が開く。
ミゲル様が開けてくれたのだ。
「いえ、今日のメニューですが玉子です。ツナのオムレツかキノコのオムレツです」
「ツナがいいな」
想像通りの答え。
ちなみに俺が剥いた芋は、マッシュポテトになっている。
「ミゲル様はケチャップお好きですよね?多めにいただいてきたのと、パンはロールパンかクロワッサンです。ハチミツとバターにしてしまいましたが、ジャムもありますが」
「ジャムはいい」
スープはコーンクリームなので、俺も同じ物にしてしまった。
「サハル、俺を優先でなくて自分で食べたいものを選んでいいんだぞ?俺はサハルが選んできたものに文句は言わないし、騎士が好き嫌いをしていたら、戦場で困ってしまうだろう?」
ミゲル様がそう言いながらソファーに座る。
「ミゲル様はそう仰いますが、せめてここにいる間だけでも少しでも好きなものを食べていただきたいのです」
俺は向かいではなく、そっとミゲル様の隣に腰を下ろした。
「サハルと一緒に食べられるなら、砂でも木の根でもご馳走になるだろう」
さらりとそんな事を言いながらミゲル様は食事を始める。
俺はそんな言葉にくすぐったくなりながら、マッシュポテトを口にした。
「ミゲル様、この後に会議でしょうか……よろしければお茶をお出ししますが」
俺はそう申し出た。
「なら、頼む。全員分と部屋の隅に一式を揃えておいてくれ」
そう言われて、わかりましたと頷いた。
何か摘めるものがあればいいかなと思いながら、食事をする。
「バター、塗りましょうか?」
ミゲル様のパンに、バターを塗ろうと手を出すとミゲル様が何とも言えない表情でこちらを向く。
「サハル、あまり俺を甘やかすな。何でもやってくれようとするが、大丈夫だぞ?」
「あっ!そんなつもりは無くて……すみません……俺がしたいと思ってしまったので」
「そうか、でもなサハル……やらせなければならないこともある。その時は心を鬼にして見守ってやれ」
ふふっと笑ったミゲル様に、怒らせた訳では無いとホッとした。
「では、ミゲル様が上手にバターとハチミツを濡れるかどうか、心を鬼にして見ていますね?」
「あぁ、上手くできたら褒めてくれ。ご褒美はサハルのキスでいいぞ?」
なんて、ミゲル様は笑いながら器用にバターを塗っていく。
どうだとばかりに胸を逸らしたミゲル様の頬に、俺はよく出来ましたとキスをさせられたのだった。
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