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114話

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色々な石がある。
少しづつ色合いが違い、どれも綺麗だったが一つこの石と言うのを見つけてしまった。
深い深い紫。
光具合で紫に見えるが、普通は黒にしか見えないけれど、何故かそれがミゲル様の瞳の色に近いと思ってしまったのだ。
好きな人の色を身に付けるのは重いだろうか。
でも、これがいいけれど値札が無い。
少し考えてやはりどうしてもこれが欲しいとミゲル様を見た。
「決まったか?」
俺はこくりと頷いた。
俺の給与から分割で払えるかな……払えなければ取り置きして欲しい。
そう思いながらミゲル様にこの石にしたいと思いますと伝えた。
「店主、この石からピアスを四つ」
「わかりました」
ミゲル様がそう伝えると、カウンターにいた老人がこちら側に出てきた。
少し腰の曲がった老人は何故か満足気に頷いて、そっとビロードごと石を取り上げる。
「支払いは出来上がった時に。これは手付金だ」
ドサッとミゲル様がカウンターに置いたのは布袋で、口からはちらりと金貨が見えた。
「ほっほっほ、やはり私の勝ちでしたな。良い伴侶を見つけられました」
老人は楽しげに笑うと、確かにと布袋を仕舞う。
「あぁ、俺には過ぎた伴侶だよ」
ミゲル様も何故か楽しげに笑い、今度は老人がカウンターの中から箱を取り出した。
「サハル、こっちへ」
ミゲル様に呼ばれてももう近いところにいるのにと、もう一歩だけ近寄ってみる。
肩が触れそうな距離になると、俺の手をミゲル様がとった。
そしてその箱を開けると一つの指輪だろうか、細いリングを俺の小指に嵌めると、緩かったそのリングは自動で大きさを調整した。
魔道具?
赤く細い筋が俺の小指に線を描く。
言われなければリングだとはわからない重さも感じないのだが。
「悪いなサハル、お前を逃がしたくないからな」
そう言ったミゲル様は朝からしていたグローブをそっと外す。
ミゲル様の小指にも赤い筋があった。
……運命の恋人は赤い糸で繋がっている。
いつか、ミゲル様が話してくれたミゲル様の故郷の話。
「見られたくないなら消すこともできるらしいがどうする?」
「このままで」
俺は即答する。
「見えなくする事はできるが、消せないと……」
「このままでいいですから、ミゲル様も見えるようにしていて下さい。ミゲル様は俺のなんですから」
もう、嬉し過ぎて泣きそうだ。
だから俺はミゲル様に抱きついた。
もう、店主のおじいさんもいなければ、キスまでしていたかもしれない。
「そうか、俺からのプレゼントだ」
そう言ってミゲル様は俺の背中を撫でてくれた。
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