【BL】かつて大聖女様と呼ばれていた俺は現在男ですが何か。

梅花

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105話

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「ふぅ……」

俺は小さく息を吐き出した。
ミゲル様の後のお湯をいただく。
ミゲル様が浸かっても狭くない湯船になみなみと張ったお湯にしっかりと肩口まで浸からせて貰っている。
気持ちいいのだけれど、何故か落ち着かない。
それにしても信じられない。
ミゲル様と……恋人になれたらいいなと考えた事は無くはないけれど、そこまで強く願う事でも無かったのだが、蓋を開けてしまうとそんな訳にもいかない。
ミゲル様と恋人になれないなんて考えたくもない。
自分のなかにこんなに激しい感情があるなんて思ってもいなかった。

「て、恋人って何をしたらいいんだ……」

一生懸命考えたが、過去も現在も恋人など居た試しが無いのだから。
俺は考えても仕方ないと、お湯から上がるとざっと身体を洗って浴室から出ると、そこにはミゲル様が待っていた。

「ミゲル様!」

俺が入ってからずっとそこで待っていたのだろうか。
それより何より俺、全裸なのですが!

「す、すまないっ!」

慌てたのは俺では無くミゲル様の方で、立ち上がるとあたふたしながら扉の方を向く。

「み、見ていないから大丈夫だ」

そう言い訳のように呟いたミゲル様だったが、見ていないならばそんな申告はしなくていいのに。
俺も慌ててバスローブと下着だけは身に付けてミゲル様の背中に触れる。

「もう、大丈夫ですバスローブを着ましたので」
「そ、そうか……もう少し話がしたかったから、部屋で待ったがサハルが出たのがわからなかったら困ると此所で待ってしまった。短慮ですまない……」

そんな理由だったのかと俺はくすりと笑ってしまう。

「なら、部屋に行きましょうか……俺の部屋だと少し狭いのでミゲル様のお部屋でも宜しいですか?」
「あぁ」

こくりと頷いたミゲル様だったが、何故かこちらを向かず、そのまま浴室を出ていこうとする。
俺は触れていた手を離してから、ミゲル様が向かった背中を追いかけたのだった。
そして、ミゲル様の部屋に再び入ることになる。

「サハル……酒を飲んでも?」

グラスと何かの瓶を持ったミゲル様に、俺はどうぞと頷いた。
2つ持ったグラスに、ミゲル様が瓶の中の液体を注ぐとそれは鮮やかな青い色をしていた。
寝台に並ぶように座る。

「それほど強くない甘めの酒だからサハルも少し飲むといい」

綺麗な海の色をイメージするそれはグラスの中でゆらりと揺れる。

「わぁ、綺麗な青ですね」

俺はミゲル様が差し出したグラスを受け取り、その酒を灯りに翳した。
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