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104話

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思いを伝え晴れて恋人同士になった俺達だったが、ふいに部屋の中が静寂で満たされた。
でもそれは心地好い静けさで、俺はそっとミゲル様を見上げた。
「サハル、あまり遅くまでこうしていたら明日に響くだろうか」
少し照れているように見えるミゲル様。握った手の指先に力が入る。
「そう、ですね……俺、部屋に戻りますミゲル様眠る前に何か飲みますか?それとも……湯に」
もう少しこうしていたかったが、明日も普通に勤務があるのだ。
「湯に入るが、サハルは……先に入るか?」
「いえ、俺はミゲル様の後で。支度をしてきますね!」
俺は立ち上がるとミゲル様の部屋からバスルームへと向かう。
磨き上げてあるバスルームに水を張りながら温める支度をする。
バスマットやアメニティの確認をして、ミゲル様に気持ちよく過ごして貰いたいと湯に入浴剤を少し落とした。
疲労が取れるようにと入浴剤に付与をしていた。
「ミゲル様、お湯の用意が……っ!」
声を掛けようとして振り向いた先にはミゲル様。
触れそうになるくらいの距離に立たれ、俺は無意識に足を引いた瞬間バランスを崩した。
倒れそうになったが、次の瞬間ぐいっと強い力で引き寄せられる。
「悪い、驚かすつもりはなかった」
「いえっ、あの……」
ミゲル様は薄いシャツ1枚にトラウザーズ。
ふわりと香るコロンと布越しの体温。
「大丈夫ですから、お湯が冷めないうちにどうぞ」
お湯はちゃんとミゲル様の好みのお湯加減になっている。
「あぁ、悪かったな直ぐに上がるようにする」
「いえ、ゆっくりと浸かってお疲れの身体を解してください」
もうバランスが取れるのに、ミゲル様の腕は何故かそのままで。
「ミゲル様……」
俺はそっとミゲル様を見上げた。
端正な顔立ち、ゴツゴツした頬から喉へのライン。
「悪い……」
漸く離してくれたミゲル様は俺から視線を外すと、手にしていた着替えをカゴに入れた。
「早めに上がるから、直ぐに入るなら用意をしておけ」
そう言って俺を脱衣場から出した。
俺は、背中くらい流そうと思っていたが、必要なら呼ばれるだろうと自分の部屋に入る。
それからミゲル様が上がるまで呼ばれることは無かったのだが、ずっと心臓がドキドキしっぱなしで、寝台の上でクッションを抱き締め座っていた。
やがてカタンと音がしてミゲル様が出てきたのに気付く。
「ミゲル様、お身体を拭きますから!」
俺が慌てて脱衣場に入ると、ミゲル様は既に服を着た後だった。
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