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101話

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「……ミゲル様」
あの夜の出来事を忘れた訳じゃないし、ミゲル様の事は好きだ。
でも、そんな大切な行為ならきっとしない方が良かったと差し出した小指を引っ込めようとした瞬間、ミゲル様の指に軽く力が込められる。
「ごめんなさい、そんな大切な事を知らなくて……」
俯きながら謝った俺の頭を軽く撫でたミゲル様。
驚いて見上げると優しさい笑みを浮かべていた。
「謝るな、むしろ嬉しい」
繋いだままの小指。
「運命の伴侶の小指と小指は見えない赤い糸で結ばれているんだと」
そう話し出したミゲル様。
「見えないのに、どうして赤いとわかるのだろうかとか、思ったこともあったがな……俺の故郷では恋人や伴侶が居る場合は小指に細いリングをしていたりするんだ。リボンを象ったリングの結び目には赤い宝石を埋めたりもするのが、見ていて恥ずかしいと思ったときもあったが、今なら少し羨ましくもある」
それから、こほりとミゲル様は咳払いをしてから俺をしっかりと見下ろした。
「サハル、ゆっくりでいいから考えてくれないだろうか……俺はサハルが好ましい……好きなのだが、恋人にはなってくれないか?」
信じられない言葉に、俺はぽかんとミゲル様を見上げていた。
絡まった小指にミゲル様の唇が触れる。
「男同士だと言うことはわかっている……だから、直ぐに答えろとは言わない。ましてや上司として圧力を掛けるつつもりもない。できればサハルに俺を好きになって貰えたらいいとは思うのだが」
表情はあまり変わらないが、ミゲル様の瞳が少しだけ不安そうな色を見せた。
「俺はミゲル様の事を好きです……ただ、見た目の問題で俺はミゲル様の隣に並び立てますか?どう見ても俺は男です、ミゲル様が後ろ指をさされるのはいやなのです」
同性婚も珍しくはないが、ミゲル様は騎士団長なのだ。
「サハルは何の心配をしているんだ?」
今度はミゲル様がきょとんとしていた。
「え?だって……ミゲル様は騎士団長で……結婚を……」
「え?」
そして、ミゲル様は笑いだした。
「俺は騎士だから、嫁は娶らないぞ?」
その単語に驚くのはこちらだった。
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