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98話
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サハルは誰よりも遅く眠りについて、誰よりも早く起床した。
早朝から厨房の仕込みを終えて、部屋に戻るとミゲル団長の支度を手伝いそれが終わると食堂の給支を行い自分も食事を片手間にしてから午前は軍医の見習いとして医務室に勤め、午後は団長の小姓として雑務をこなし、再び厨房の仕込みを行う。
毎日が戦場のような忙しさをサハルは平然とこなしていく。
「サハル、少し休め……騎士ですら、連続勤務はしないぞ?」
「大丈夫ですよ、お気遣いいだきありがとうございます」
疲れることなど無いくらい楽しく働けるのだ。
聖女の時は祈りを捧げることしかできなかった。
それも、自分の性別を偽っているため不安が付きまとう。
また、感謝もされたがそれと同じくらいやって当然、できて当然と思われていた。
だけど騎士団に来てから、感謝の言葉を沢山貰えたのだ。だからどんなことでもできた。
ある日、サハルは夜半に呼び出された。
人気の少ない騎士団寮の裏庭に。
呼び出したのは騎士団の小隊長の1人だった。
アッシュと言う、背が高く美形と言ってもいい女性が好みそうな顔立ちの騎士だ。
【食事の件で頼みがある】そんな内容の手紙だった。
嫌いなものがあるから、克復を手伝って欲しい。
何回か他の騎士からもそう頼まれたことがあり、苦手な食材を好きな食材へと変えた事があるため、今回もそうなのだろうと思い込んだ。
「アッシュ様、何が嫌いなのかな……」
騎士は何でも食べなければならない。
戦場に出て好き嫌いは許されないのだ。
待ち合わせの時間より少し早く着いたため、其処にはサハル以外に誰の影も無かった。
そもそも、誰の影も無い時点でおかしいと思わなければならなかったのだが、聖女の役目から遠退いていたサハルには危機管理が薄くなっていた。
「サハルか?」
「アッシュ様ですか?此処です」
声を掛けられて振り向いた瞬間、軽く突き飛ばされて身体が倒れる。
半分捻るようにした身体が地面に叩きつけられて半身に痛みを感じた瞬間、身体が押し付けられるように重さを感じた。
「なっ……」
ぐっと肩が押されて喉が上向く。
苦しさに息を吐き出すと、腹の辺りに馬乗りになられていた。
重い。
乗っているのは騎士のため、細身に見えても筋肉質だ。
それに、サハルも鍛えてきてはいるがまだ背も伸びる途中の成長期なのだ。
「アッシュ様、ではありませんね」
次は陰りそのシルエットしか見えないが、どう見てもそれは自分の知るアッシュではない。
それよりも、少し小柄に見えた。
ふわりと香るのはホワイトリリーの香り。
その匂いに心当たりがあった。
早朝から厨房の仕込みを終えて、部屋に戻るとミゲル団長の支度を手伝いそれが終わると食堂の給支を行い自分も食事を片手間にしてから午前は軍医の見習いとして医務室に勤め、午後は団長の小姓として雑務をこなし、再び厨房の仕込みを行う。
毎日が戦場のような忙しさをサハルは平然とこなしていく。
「サハル、少し休め……騎士ですら、連続勤務はしないぞ?」
「大丈夫ですよ、お気遣いいだきありがとうございます」
疲れることなど無いくらい楽しく働けるのだ。
聖女の時は祈りを捧げることしかできなかった。
それも、自分の性別を偽っているため不安が付きまとう。
また、感謝もされたがそれと同じくらいやって当然、できて当然と思われていた。
だけど騎士団に来てから、感謝の言葉を沢山貰えたのだ。だからどんなことでもできた。
ある日、サハルは夜半に呼び出された。
人気の少ない騎士団寮の裏庭に。
呼び出したのは騎士団の小隊長の1人だった。
アッシュと言う、背が高く美形と言ってもいい女性が好みそうな顔立ちの騎士だ。
【食事の件で頼みがある】そんな内容の手紙だった。
嫌いなものがあるから、克復を手伝って欲しい。
何回か他の騎士からもそう頼まれたことがあり、苦手な食材を好きな食材へと変えた事があるため、今回もそうなのだろうと思い込んだ。
「アッシュ様、何が嫌いなのかな……」
騎士は何でも食べなければならない。
戦場に出て好き嫌いは許されないのだ。
待ち合わせの時間より少し早く着いたため、其処にはサハル以外に誰の影も無かった。
そもそも、誰の影も無い時点でおかしいと思わなければならなかったのだが、聖女の役目から遠退いていたサハルには危機管理が薄くなっていた。
「サハルか?」
「アッシュ様ですか?此処です」
声を掛けられて振り向いた瞬間、軽く突き飛ばされて身体が倒れる。
半分捻るようにした身体が地面に叩きつけられて半身に痛みを感じた瞬間、身体が押し付けられるように重さを感じた。
「なっ……」
ぐっと肩が押されて喉が上向く。
苦しさに息を吐き出すと、腹の辺りに馬乗りになられていた。
重い。
乗っているのは騎士のため、細身に見えても筋肉質だ。
それに、サハルも鍛えてきてはいるがまだ背も伸びる途中の成長期なのだ。
「アッシュ様、ではありませんね」
次は陰りそのシルエットしか見えないが、どう見てもそれは自分の知るアッシュではない。
それよりも、少し小柄に見えた。
ふわりと香るのはホワイトリリーの香り。
その匂いに心当たりがあった。
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