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97話

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「お祖父様、行って参ります」

ミゲル団長と一緒に頭を下げると、お祖父様は何かあれば帰ってきなさいと頭を撫でてくれた。
マーサも大丈夫かと、心配そうにこちらを見てくる。

「長いお休みをいただけたら戻ってきます」
「ならば、直ぐ……だろうなぁミゲル団長?」
「は、はい……そのように!」

今でもお祖父様に頭が上がらないミゲル様に笑みを溢してしまう。

「では、サハル気をつけて」

マーサにぎゅうっと抱き締められると、今度はお祖父様にも抱き締められて、色々とあったことを思い出した。
胸に下がるのはペンダント。
あの魔石を加工したものだ。
あれから、聖女が術を発動させにやってはこない。
発動させられなければ聖女の面目丸つぶれなのだから。
そう簡単にはやってこれないだろう。

「行って参ります」

手を振ってから馬車で屋敷を離れると、ミゲル様と同じ馬車で騎士団へと向かう。

「長くお休みをいただきまして申し訳ございませんでした」

揺れる馬車の中で頭を下げた。

「いや、大変だったな色々と……騎士団に戻ったらまた大変だろうが頑張ってくれ」
「はい!ミゲル様のマッサージも毎日しますから」
「あ、あぁ……無理の無い程度に頼む」
「で、俺は今までと同じ感じでいいですか?」

休んでいる間に色々と変わってしまったことがある。
お祖父様の養子だと言うこともばれてしまったのだから。

「サハルはどうしたい?」
「どう?とは?」

ミゲル団長の問い掛けに意味がわからないと首を傾げた。

「やりたいことがあるかと言うことだ。貴族なのだから騎士団を脱退……」
「するつもりはありません。俺は騎士団に居たいです」
「そうか、なら、騎士団の中でやりたいことがあるか?料理が好きなら厨房専属でもいいし、医務室で軍医見習いでもいい。一兵でももちろん構わないが……」
「なら、全てに属させてください!」
「は?」

厨房なら、騎士の健康管理もできるし、軍医見習いなら癒しも使える。

「それと、できたらミゲル様の側仕え……も」
「そんなにしたら身体がいくつあっても足りないだろう?」
「大丈夫です、聖女の時は眠るとき以外はほぼ働いていましたし、体力には自信が……!」

気にしないでくださいと言ったつもりだったが、目の前のミゲル様の目が据わった。
なんで?

「あ、あの……」
「取り敢えずだ。7日のお試し期間を設けるが、無理そうならちゃんと選んで貰うからな?」
「は、はい!ありがとうございます」

頭を下げたサハルには見えなかった。
ギリッとミゲルが歯をくいしばったのを。

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