92 / 156
92話
しおりを挟む
「マーサ様、お祖父様、ちょっとお怒りじゃありませんか?」
神官が退出した後、再び魔石を起動させる。
普段の優しげなトーンではあるが、時おり混じる言葉に、伯爵の苛立ちが感じられた。
それはミゲル様もわかっているらしい。
話を聞くと魔石は『サハルが認め、起動ができれば神殿に譲る』事で話は決まったようだった。
神殿長が起動させる実験をするのに、魔石を渡して欲しいと言っていたが、伯爵は元々の装飾品は伯爵家の所有物であり、度重なる起動失敗で使えなくなったときはどう責任を取るのかと突っぱねた。
「サハルそろそろお父様が来ますので帰る支度を」
「うん」
ふたりで椅子から立ち上がるのと同じタイミングで、扉が開く。
「マーサ、サハル帰ろうかの?ミゲルはとりあえず屋敷に一緒に来い」
「わかりました、皆もこのあと解散をする。各々騎士団へ帰っていい。ご苦労だった」
「はいっ!」
騎士団の皆ともう少し話をしたかったけれど、また、復帰したら顔を合わせる事になる。
ひらひらっと手を振ってから宝石箱を手にすると、先を歩くお祖父様とミゲル団長をマーサと追い掛けた。
神官達が廊下の端に寄り道を開ける。
その間を抜けると、漸く外へと出た。
空気か変わった感覚。
息の詰まるような重かった空気が一気に無くなった。
「サハル、元気そうで良かった。お前がいないと書類が山積みで……色々あるだろうが早めに帰ってくれるとありがたい……」
そそっと寄ってきたミゲル団長に驚きながらにこりと笑みを向けた。
「はい、直ぐに戻りますから」
何だか可愛いと思ってしまうのは仕方ないと思う。
俺の回答にホッとした様子のミゲル様は、お祖父様の咳払いにハッとしてから悪いと目礼して離れていった。
マーサが先に乗り込みましょうかと俺を促しふたり先に乗り込んだ。
暫くお祖父様とミゲル団長は外で話をしていたらしく、乗り込んでくるのに時間がかかり、馬車が動き出すとミゲル団長は、自分の騎馬で隣を並走していく。
窓からその姿が見えてその背筋の伸びた凛々しい姿に少しだけ見惚れてしまうのだった。
馬車が伯爵家の馬車留めに止まり、扉が開く。
お祖父様が先に降りて、俺、マーサの順番で続く。
先に降りていたお祖父様に頭を撫でられて首を傾げる。
「ミゲル、今夜は泊まってゆくか?」
「お邪魔で無ければ」
「ならば、明日サハルと一緒に出勤すれば良かろう?」
「なら、お言葉に甘えまして」
そんなふたりのやりとりにおや?と、思いながらもそれを静かに聞いていた。
神官が退出した後、再び魔石を起動させる。
普段の優しげなトーンではあるが、時おり混じる言葉に、伯爵の苛立ちが感じられた。
それはミゲル様もわかっているらしい。
話を聞くと魔石は『サハルが認め、起動ができれば神殿に譲る』事で話は決まったようだった。
神殿長が起動させる実験をするのに、魔石を渡して欲しいと言っていたが、伯爵は元々の装飾品は伯爵家の所有物であり、度重なる起動失敗で使えなくなったときはどう責任を取るのかと突っぱねた。
「サハルそろそろお父様が来ますので帰る支度を」
「うん」
ふたりで椅子から立ち上がるのと同じタイミングで、扉が開く。
「マーサ、サハル帰ろうかの?ミゲルはとりあえず屋敷に一緒に来い」
「わかりました、皆もこのあと解散をする。各々騎士団へ帰っていい。ご苦労だった」
「はいっ!」
騎士団の皆ともう少し話をしたかったけれど、また、復帰したら顔を合わせる事になる。
ひらひらっと手を振ってから宝石箱を手にすると、先を歩くお祖父様とミゲル団長をマーサと追い掛けた。
神官達が廊下の端に寄り道を開ける。
その間を抜けると、漸く外へと出た。
空気か変わった感覚。
息の詰まるような重かった空気が一気に無くなった。
「サハル、元気そうで良かった。お前がいないと書類が山積みで……色々あるだろうが早めに帰ってくれるとありがたい……」
そそっと寄ってきたミゲル団長に驚きながらにこりと笑みを向けた。
「はい、直ぐに戻りますから」
何だか可愛いと思ってしまうのは仕方ないと思う。
俺の回答にホッとした様子のミゲル様は、お祖父様の咳払いにハッとしてから悪いと目礼して離れていった。
マーサが先に乗り込みましょうかと俺を促しふたり先に乗り込んだ。
暫くお祖父様とミゲル団長は外で話をしていたらしく、乗り込んでくるのに時間がかかり、馬車が動き出すとミゲル団長は、自分の騎馬で隣を並走していく。
窓からその姿が見えてその背筋の伸びた凛々しい姿に少しだけ見惚れてしまうのだった。
馬車が伯爵家の馬車留めに止まり、扉が開く。
お祖父様が先に降りて、俺、マーサの順番で続く。
先に降りていたお祖父様に頭を撫でられて首を傾げる。
「ミゲル、今夜は泊まってゆくか?」
「お邪魔で無ければ」
「ならば、明日サハルと一緒に出勤すれば良かろう?」
「なら、お言葉に甘えまして」
そんなふたりのやりとりにおや?と、思いながらもそれを静かに聞いていた。
応援ありがとうございます!
4
お気に入りに追加
2,116
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる