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87話
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建物の奥の奥。
一番奥にひっそりとあるのが、喪服を扱うブティックだった。
黒で統一された店内。
置かれた服も黒ばかりだ。
「失礼する」
伯爵の声に出てきたのは細くすらりとした女性で、何処と無くマーサに似ている。
「わしの娘であり、マーサの妹じゃ」
俺がまじまじと女性を見てしまったからだろう、そう伯爵が声をかけてくれた。
「初めまして、サハルと申します」
「リーサです」
リーサと名乗った女性は奥から箱を出してきた。
「女性の装束一式が入っております」
「悪いの?」
「いえ、それと、サハル様の喪服を一式ですね?採寸をさせていただけますか?」
リーサに連れられて入った個室。
服の上から簡単に採寸をされて
好みのデザインを選ばされた。
ただ、男性の喪服などデザインの好みなどほぼ無いのだが。
一式を揃えて靴を買う。
不謹慎だと後から言われそうだが仕方ない。
リーサのお店で箱に包まれた喪服を買い、後で屋敷に届けて貰うとお願いをしてから店を出た。
向かいにあるカフェのケーキが気になると、伯爵は道を渡って店内に入り、軽いお茶を飲ませてくれる。
端から見たら本当の家族に見えるかもしれない。
俺には家族と言う家族の記憶が無い。
だから、嬉しかった。
「サハル、あと数日我慢してくれ」
そう言われて頷く。
そしてその日はやってきた。
招いたのは医者と牧師。
それはもちろん、伯爵の仲間であり、事情を知るもの。
俺はミゲル様に書いていた手紙を送る。
サシャ様が旅立たれたと。
喪服に身を包み少人数で仕来たりに則りながら式を終えたのは、予定通り。
サシャが身に付けていたペンダントを形見だと貰い受け……自分のだから、貰い受けるという表現はおかしいのかもしれないけれど。
軽い棺を伯爵の敷地にある墓地へと埋葬した。
一番奥にひっそりとあるのが、喪服を扱うブティックだった。
黒で統一された店内。
置かれた服も黒ばかりだ。
「失礼する」
伯爵の声に出てきたのは細くすらりとした女性で、何処と無くマーサに似ている。
「わしの娘であり、マーサの妹じゃ」
俺がまじまじと女性を見てしまったからだろう、そう伯爵が声をかけてくれた。
「初めまして、サハルと申します」
「リーサです」
リーサと名乗った女性は奥から箱を出してきた。
「女性の装束一式が入っております」
「悪いの?」
「いえ、それと、サハル様の喪服を一式ですね?採寸をさせていただけますか?」
リーサに連れられて入った個室。
服の上から簡単に採寸をされて
好みのデザインを選ばされた。
ただ、男性の喪服などデザインの好みなどほぼ無いのだが。
一式を揃えて靴を買う。
不謹慎だと後から言われそうだが仕方ない。
リーサのお店で箱に包まれた喪服を買い、後で屋敷に届けて貰うとお願いをしてから店を出た。
向かいにあるカフェのケーキが気になると、伯爵は道を渡って店内に入り、軽いお茶を飲ませてくれる。
端から見たら本当の家族に見えるかもしれない。
俺には家族と言う家族の記憶が無い。
だから、嬉しかった。
「サハル、あと数日我慢してくれ」
そう言われて頷く。
そしてその日はやってきた。
招いたのは医者と牧師。
それはもちろん、伯爵の仲間であり、事情を知るもの。
俺はミゲル様に書いていた手紙を送る。
サシャ様が旅立たれたと。
喪服に身を包み少人数で仕来たりに則りながら式を終えたのは、予定通り。
サシャが身に付けていたペンダントを形見だと貰い受け……自分のだから、貰い受けるという表現はおかしいのかもしれないけれど。
軽い棺を伯爵の敷地にある墓地へと埋葬した。
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