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82話

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「サハル、身体は辛くないか?」
「え?」
「大丈夫ならいい」

ミゲル様はちらりとこっちを見て直ぐに視線を逸らした。
何か思うところがあったらしい。

「は……い?」

何を心配されているのかわからずに俺は首を傾げた。
少しだけ身体のあちこちが痛いがふたりで狭い寝台で眠ったのだから仕方ない。
それにしても誰かとこうして眠るのは初めての経験だった。

「ミゲル様、お支度を整えますね?今日は通常のもので?」

スケジュールを思い出すと今日は特に何もない。
普通に出勤をしてやることを考えるだけ。
お休みを貰ったが、何だか落ち着かなくなるのは目に見えている。
だったら休むよりは少しでも仕事をした方がいい。
食事をしてから宿の部屋に一度戻り忘れ物等が無いのを確認してから騎士団へ戻る。

「あぁ、頼む」

シャツにトラウザーズ、長靴ブーツの、簡易服を用意しなければと、その前にシャワーを浴びてもらった方がいいだろうか?
たぶん、昨夜はシャワーを浴びて寝ていないだろう。
騎士団の部屋に戻ってからシャワーを浴びて貰う時間はありそうだなと思いながら宿屋を出ようとして、支払い額がわからなくなる。
昨日は酒を飲んだ……から、追加の料金が発生している筈だ。

「ミゲル様、支払いをして参りますね?」
「もう済んでいるこの泊まった分もな?だから、気にしなくていい」
「いけませんよ!俺…みんなの分までは無理ですけど、自分の分だけくらいは…」
「きにするな、騎士団に戻ったら美味いお茶を淹れてくれればいい」

行こうかと促されると、俺はご馳走さまですと頭を下げた。
下手に遠慮しては失礼になる…が、今まで奢られる経験もなくて、美味しいお茶くらいはいれなければと思った。

それにしても、昨夜は何も…無かった…で、いいのだろうか。
ミゲル様はいつも通り。
気にしてはいけないのかもしれないと小さく頭を振った。
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