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65話

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「あら、サハルちゃんじゃない」

可愛らしい声で俺を呼んだのは後続隊を指揮して来たサディ小隊長。

「シグルドちゃんもいるじゃない?状況を教えて?」

ラーシュ副団長の天幕を覗き込んでキャッと笑った小隊長は、声も仕草も可愛いが、パッと見ゴツい男性。
騎士団の小隊長で、かなりの剣技だが、しゃべり方が何故か女性的。
可愛い物が大好きな方だ。

「サディ、来たか…まぁ座りなさい」

ラーシュ様が促すと、はぁい。と、手を振りながら天幕へと入ってきた。
サディと言うのは仮の名前なのだが、本名を知っているのは団長や一部の騎士だろう。
怖くて聞けない。
ムキッと鍛えられた身体が着ている服の上からでもわかる。
綺麗に染めたピンクブロンドの髪を1つに結わえていた。
俺は地毛だけど、サディ小隊長の髪は綺麗に整えられているが、眉毛がピンクで書いてあるため染めているのだと気づいた。
これを維持するのは並大抵な事じゃない。

で、何故此処に俺がいるかと言うと、ひとつは討伐が終わったから討伐隊は王都に帰る事、サディが率いて来た後続隊が森の調査に入ること。
俺に後続隊から残って欲しいと依頼があること。
ミゲル団長から、後続隊全員分のペンダントが届いていること。
その他色々とラーシュ副団長が喋る。

結局は俺に残って欲しいらしい。

構いませんよと答えると、隣に座ったサディ小隊長にぎゅむっと抱き締められた。
く、苦しい!


「やぁん、嬉しいわ!これで随分と楽になるわねー」
「サディ、サハルが死ぬ」

じたばたした俺を副団長が気付いて止めてくれる。
あー…死ぬかと思った。

「じゃあサハルは行っていいわるかったな?」

副団長が手を上げたことで俺はぺこりと頭を下げた。
撤退準備をしていたけれど、畳んでしまったテントは何処かに作り直さなきゃならないし、今度こそ自分でやらなきゃ!と、腕捲りをした。

「サハルちゃん、大丈夫よぉ。貴方のテントは私の隣だからねぇ?もう誰かが作ってくれているから確認して?」

背後からかかったサディ小隊長の声に俺はちょっとがっかりした。
今度こそと思っていたのに…

「あ、ありがとうございます」

お辞儀をしてから天幕を出ていくと、どでかいピンクのフリル満天な天幕が見えた。
え、あれ絶対そうだよね。
ちょっと流石にあの中にいたら目がチカチカするんじゃないかなぁ…なんて考えずにはいられなかった。
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