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55話

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「行って参ります」

出陣式を終えてから、持ち場に着くと、ミゲル様が来てくれていた。
後方支援部隊のため、本来は最後尾からの出発だが、あちら側に着いてから直ぐに防御壁の展開を行うため、早めの同行を許可して貰う。

「気を付けろ、サハルの代わりはいないのだからな」

俺は頷いて馬上の人となる。
手綱を繰って馬を歩かせ俺はほかの騎士と同じように転移した。

出た先はある村から少し離れた森の入口。
王都から、馬だと5日くらいの距離の場所だ。
この村に現れたのはドリアード。大木の一部が女性の姿をした木のモンスターだった。
通常ならば、1体で行動するモンスターだが、今回は3体同時に出現した。
1体の強さとしては、それほど強いモンスターではないが、厄介な事に使うスキルが『毒』『麻痺』『眠り』『魅了』
どのタイミングでどれを使ってくるかは慣れていないとわからない。
今はどうやら森へ帰っていったようだ。

「サハル…」

背後から掛かった声に振り向くと、ラーシュ副団長だった。

「ラーシュ様、まだ後のお越しではない筈ですのに…」
「まぁ、な」

きっとミゲル様に何か言われたのだろう。

「取り敢えず、陣地と村の周りに結界をはりますので…少し廻ってきます」
「なら、誰か騎士をつけよう」
「ありがとうございます。ラーシュ様、先見隊で怪我をされた方、状態異状のある方は集まっていてください」
「そのように伝えておく」
「では、行って参りますね?」
「シグルド、サハルに付いていってやれ…結界の位置確認だそうだ」
「はっ!」

返事をしたのは、ラーシュ様の後ろにいた…小隊長様だよねっ!
俺の護衛になんか付けちゃいけない人だよっ。

「サハル、行こう」

優しげな表情をしているが、小隊長をするくらいだから、強いのは間違いない。

「あはは…宜しくお願いします」

ペコリと頭を下げると、馬に乗ったまま村の方に向かう。
村と魔方陣を含む広さの防御壁を展開しなければならないため、だいたいの距離を測りたい。
トコトコと馬を歩かせると、村の入口にいる騎士と目が合うと、頭を下げられた。
きっとシグルド様に挨拶なのだろうと思いながらも自分も頭を下げ、村の柵に沿ってぐるりと一周する。あまり時間はかからずにまわれる距離でホッとしながら、だいたいの距離を測るとある一点で馬を降りると、首から外したペンダントをその場で土に落とした。
それを踵で踏むと、ぶわっと一気に石を中心に魔法障壁ができて、転移魔方陣と村を包むように広がった。

「このくらいかな…っと」

ペンダントから足を離すと其処に土を掛けて埋めてしまう。これでかなりの時間は稼げるだろう。
さて、次は『サシャ様から預かった魔石』での、状態異状回復だね。
村人と、先見隊が先かな。
これが本来の聖女の仕事なのだと、俺はルンルンと村に向かった。
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