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32話☆

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あの、魔獣討伐終了から、俺の部屋は何故か個室になった。
それに今までやっていたような下働きの仕事も無い。
洗濯でもしようものなら、誰かがとんできてそれをかっさらわれる。
何で?
その理由がわかったのは、俺が騎士団に移動になる前夜だった。
ぞろぞろと部屋に押し掛けてきたのは、以前同室だった3人。
手に切り傷用の塗り薬を持っていた。
「サハル……いや、サハル様、あの……俺たちにも力をお分け下さい……」
誰が言い出すか肘でつつき合ったあと、1番年長者が話始める。
「えっ!?何、急に……いいからはいって?」
廊下で騒いだら怒られると、部屋の中に促すと、3人は首を横に振る。
「サハル様が、俺たちの身体を解きほぐしてくれていたときは凄く身体が軽くなったし、夜勤のお茶を飲めば眠気が覚めた……貰った塗り薬は瞬く間に傷が塞がっていったけれど、俺たちはそれを不思議に思わなかった」
「すみません!あの、魔獣討伐のとき、俺たちは何もできなかった…」
「怪我人の傷を治すのが精一杯だったのに……」
「あー……あれは、元聖女のサシャ様から石を預かっていたので、軍医長様に1つを渡して、もうひとつは騎士様にお渡ししたから、俺は何もしてないよ?」
そう、しらばっくれる。
「それでもサシャ様から石を預けられるくらいの力はある……の、てしょう?」
俺に対して喋りなれない敬語に、つかえつかえながら言葉にしている。
それが少し可愛くてくすりと笑った。
「あれは、サシャ様と俺が似ているから仲良くしてくださっているから預かったもので、特に持っているだけじゃ魔力を持っていかれるような物じゃない。
詰めた魔力だけを解放する魔道具だよ」
そんな、大層なものじゃない。
むしろ、魔力を吸われるような魔道具は、術具と呼ばれ呪いがかけられたりしているのだ。
「だから、俺って何もしていないし、たぶんちょっとだけみんなより魔力量が多いくらいなんだけどさ、医者も大切だけど、前線に出て治療したいから騎士になるんだ。
俺の回復でいいなら軟膏貸して?」
ほら、と手を出すと3人がそれぞれの軟膏入れを差し出した。
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