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7話

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「サシャ様、そのままミゲル様の胸に顔を埋めていてくださいませ」
マーサに小さな声で言われるがまま、俺はそっと頭を預ける。
服の上からでもわかるがっちりとした肢体。
あぁ、こうありたかったと思わせるような姿。
ちらりとしか見えなかったが顔の造形も男性らしくなおかつ整って見えた。
「重いでしょう?すみません……」
俺は周囲に聞こえないように小さな声で謝る。
「構いませんよ、重くもありませんから」
爽やかな耳障りの良いテノール。
軽々と抱き上げられて運ばれ、用意された馬車にミゲル様ごと乗り込む。
ミゲル様ごと乗り込める馬車が用意されたのに驚きなのだが。
御者にマーサが自宅の場所を告げると、ガタンと揺れてから馬車はゆっくりと動き始めた。
小さな振動しか感じないのはこの馬車が良いものだとわかる。
「で、マーサ殿どう言うことか説明をして欲しいが……俺に言える事か?サシャ様は、筆頭聖女のサシャ様だろう?」
ミゲル様が静かに問いかける。
「サシャ様、お話しても?」
マーサが俺に聞いてくるが、それより俺はいまだにミゲル様に抱かれ膝の上に座らされたままなのだ。
「えぇ、構いませんが……」
おろして欲しいと言えないままになってしまうと、マーサは今までの事をミゲル様に話していく。
俺が男だと言うことは言わずに。上手く要点を掻い摘んで。
「なんと……」
「ですから、サシャ様には病かなにかで私の実家で療養いただき、最終的には聖女から外れるようにしていただこうかと思っておりますので、何かありましたらミゲル様もお手伝いくださいませね?」
にっこりと笑ったマーサに、ミゲルは静かに頷いた。
いつの間にかミゲル様と繋いでいた手に力が込められる。
この人は信用できるのだろうか……俺は窓の外を流れる街並みを見ていた。
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