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5話
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俺はどうかしていたんだろう。
あの、マーサに食って掛かるなんて。
それだけ切羽詰まっていたのかもしれない。
「何をおっしゃって……」
一瞬、男言葉に戻ってしまった自分に気を落ち着かせようと咳払いをしてから顎を上げる。
「マーサだって知っているはずでしょう?神殿が私に嫁げと打診していることを」
「それは、全てお断りを……」
「できていないから、私の所に話が来ているのですよ……直接」
女官を通せば必ずマーサを通すことになるから。
神殿長から圧力に近い申し渡し。
何かと訪ねてくる王子が神殿長に渡しているものがあるのだろう。
そう度々偶然があるわけがないのだ。
何度か他の聖女や女官がいる所で話をしたが、それがいけなかったのだろう。
また、聖女は望まない婚姻は不可とされているが、それは王子たるもの規則をねじ曲げて既成事実を作ってしまってから婚姻の手続きを踏めばいいと思っている節もあり……俺はこの年に1度だけある花祭りの日に賭けていた。
それを見つかり、挙げ句のはてには……
確かに考えが浅かった。
一人で行う事はできなかった。
ただ、誰かを巻き込む訳にもいかなかったのだ。
「サシャ様、聖女の称号に未練はありませんか?」
マーサの言葉に俺は次第にうつむきがちになる顔をもう1度上げた。
マーサの提案はこうだった。
気が昂ったサシャを花祭りに連れ出した先で体調不良になり、何日か休みをマーサの実家で取るも、良くならずに常に静養をしている。と。
マーサの実家は伯爵家ではあるが諸事情により、おいそれと皇室でも調査できない理由がある。
時間を稼ぐ間に何かを考えましょう。と言ってくれたマーサに、頷くと、サシャは髪を整えてもらう。
自分が聖女だと言うことを逆に印象づけなければならないのだから。
少し待っていてくださいとマーサが小屋を後にして、戻ってきた時に持っていたのはヴェール
ふわりと髪に纏うヴェールは俺が選んだものより薄いものに変えて、髪には花の髪飾りと、周囲に配る花を入れた花籠。
マーサは侍女の姿になると、ふたりで堂々と神殿を出たのだった。
あの、マーサに食って掛かるなんて。
それだけ切羽詰まっていたのかもしれない。
「何をおっしゃって……」
一瞬、男言葉に戻ってしまった自分に気を落ち着かせようと咳払いをしてから顎を上げる。
「マーサだって知っているはずでしょう?神殿が私に嫁げと打診していることを」
「それは、全てお断りを……」
「できていないから、私の所に話が来ているのですよ……直接」
女官を通せば必ずマーサを通すことになるから。
神殿長から圧力に近い申し渡し。
何かと訪ねてくる王子が神殿長に渡しているものがあるのだろう。
そう度々偶然があるわけがないのだ。
何度か他の聖女や女官がいる所で話をしたが、それがいけなかったのだろう。
また、聖女は望まない婚姻は不可とされているが、それは王子たるもの規則をねじ曲げて既成事実を作ってしまってから婚姻の手続きを踏めばいいと思っている節もあり……俺はこの年に1度だけある花祭りの日に賭けていた。
それを見つかり、挙げ句のはてには……
確かに考えが浅かった。
一人で行う事はできなかった。
ただ、誰かを巻き込む訳にもいかなかったのだ。
「サシャ様、聖女の称号に未練はありませんか?」
マーサの言葉に俺は次第にうつむきがちになる顔をもう1度上げた。
マーサの提案はこうだった。
気が昂ったサシャを花祭りに連れ出した先で体調不良になり、何日か休みをマーサの実家で取るも、良くならずに常に静養をしている。と。
マーサの実家は伯爵家ではあるが諸事情により、おいそれと皇室でも調査できない理由がある。
時間を稼ぐ間に何かを考えましょう。と言ってくれたマーサに、頷くと、サシャは髪を整えてもらう。
自分が聖女だと言うことを逆に印象づけなければならないのだから。
少し待っていてくださいとマーサが小屋を後にして、戻ってきた時に持っていたのはヴェール
ふわりと髪に纏うヴェールは俺が選んだものより薄いものに変えて、髪には花の髪飾りと、周囲に配る花を入れた花籠。
マーサは侍女の姿になると、ふたりで堂々と神殿を出たのだった。
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