1 / 160
1話
しおりを挟む
「サシャ様、なりません!」
女官のキンキン声に耳を塞ぎたくなる。
晴天の空の元、暖かい日差しが室内には降り注いでいたが、俺は眉間に無意識に皺が寄るのがわかった。
先程から何は駄目かには駄目とそればかりで、いい加減にイライラとしてくる。
「なら、何なら宜しいの?代替案をご提示になって?それでなければ私も納得致しかねますわ」
ふぅと、溜め息を吐いてから俺は目の前の女官を見つめる。
何も特段難しいことを言っているのではない、今日は街に出たいと言っただけなのだ。
俺、サシャは今、都の中央にある大神殿にいる。
役職は今世の聖女の中の筆頭であり、最も力の魔力の強い筆頭聖女である。
俺がだ。
珍しい銀に少しだけ赤みの入った背中を覆うピンクブロンドに紫の瞳。
纏うのは聖女だけが着ることを許された制服で、袖の長いビショップスリーブのようなロングチュニック。
チュニックにはサイドに腰までのスリットが入り、下にはたっぷりの布をあしらった踝までのふわりとしたロングスカート。
詰めた襟の為、肌の露出は少ない。
チュニックは白に赤糸で襟と袖に2本縁取りの刺繍がされており、スカートは濃紺。
刺繍の色と本数は聖女の階級を表している。
何で男の俺が聖女なんかをしているのかと言うと……まぁ、色々とあって……幼い頃からだから、かれこれ10年近く聖女をやっているんだけど。
最近、何故か色々と面倒に巻き込まれるんだ。
隣国の王子から求婚されたり、王宮から無理難題を言われたり。
あまりにもイライラが溜まっていた俺は今日市政に出掛けるつもりだった。
それを止められて怒りは最高潮。
だって今日は本当は聖女もお休みの日だろうが!月に数回しか貰えない貴重なお休みと、数ヶ月に一回行われる街のお祭りが重なったのだ。
だから、少ないが貯めた給金を使って買い物をしたかった。
美味しいものを食べて、欲しい身の回りの小物も揃えたかったのだ!
神殿から配給されるものは品が良くない。贅沢かもしれないが、手荒れ用の軟膏等だって欲しい。
それを頭から否定されて俺の怒りはふつふつと沸いていた。
女官のキンキン声に耳を塞ぎたくなる。
晴天の空の元、暖かい日差しが室内には降り注いでいたが、俺は眉間に無意識に皺が寄るのがわかった。
先程から何は駄目かには駄目とそればかりで、いい加減にイライラとしてくる。
「なら、何なら宜しいの?代替案をご提示になって?それでなければ私も納得致しかねますわ」
ふぅと、溜め息を吐いてから俺は目の前の女官を見つめる。
何も特段難しいことを言っているのではない、今日は街に出たいと言っただけなのだ。
俺、サシャは今、都の中央にある大神殿にいる。
役職は今世の聖女の中の筆頭であり、最も力の魔力の強い筆頭聖女である。
俺がだ。
珍しい銀に少しだけ赤みの入った背中を覆うピンクブロンドに紫の瞳。
纏うのは聖女だけが着ることを許された制服で、袖の長いビショップスリーブのようなロングチュニック。
チュニックにはサイドに腰までのスリットが入り、下にはたっぷりの布をあしらった踝までのふわりとしたロングスカート。
詰めた襟の為、肌の露出は少ない。
チュニックは白に赤糸で襟と袖に2本縁取りの刺繍がされており、スカートは濃紺。
刺繍の色と本数は聖女の階級を表している。
何で男の俺が聖女なんかをしているのかと言うと……まぁ、色々とあって……幼い頃からだから、かれこれ10年近く聖女をやっているんだけど。
最近、何故か色々と面倒に巻き込まれるんだ。
隣国の王子から求婚されたり、王宮から無理難題を言われたり。
あまりにもイライラが溜まっていた俺は今日市政に出掛けるつもりだった。
それを止められて怒りは最高潮。
だって今日は本当は聖女もお休みの日だろうが!月に数回しか貰えない貴重なお休みと、数ヶ月に一回行われる街のお祭りが重なったのだ。
だから、少ないが貯めた給金を使って買い物をしたかった。
美味しいものを食べて、欲しい身の回りの小物も揃えたかったのだ!
神殿から配給されるものは品が良くない。贅沢かもしれないが、手荒れ用の軟膏等だって欲しい。
それを頭から否定されて俺の怒りはふつふつと沸いていた。
89
お気に入りに追加
2,135
あなたにおすすめの小説
嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
麗しの眠り姫は義兄の腕で惰眠を貪る
黒木 鳴
BL
妖精のように愛らしく、深窓の姫君のように美しいセレナードのあだ名は「眠り姫」。学園祭で主役を演じたことが由来だが……皮肉にもそのあだ名はぴったりだった。公爵家の出と学年一位の学力、そしてなによりその美貌に周囲はいいように勘違いしているが、セレナードの中身はアホの子……もとい睡眠欲求高めの不思議ちゃん系(自由人なお子さま)。惰眠とおかしを貪りたいセレナードと、そんなセレナードが可愛くて仕方がない義兄のギルバート、なんやかんやで振り回される従兄のエリオットたちのお話し。完結しました!
傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる