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行って参ります。
そう言って王宮を発ったのは7日前の事。
急いで馬車を駆けさせて西の神殿がある街に着いたのは8日めの昼間だった。
辺境伯の屋敷に前日は泊まり、そこから半日の神殿に使いを出してから身支度をして向かった。
王妃としては少し簡素な格好も、辺境伯で借りた馬車も、今回はお忍びと伝えてあるため、出迎えた神官は変な顔をすること無く受け入れた。
「神殿長はいるかしら?」
「はい、お待ちになっておりますが…」
「わかっているわ。お忍びですもの。案内して頂戴」
王妃は先にたって歩く神官にゆっくりと着いていく。
見る人か見れば高貴な方だとわかるだろう。
白い石畳の廊下を歩く度にカツンカツンとヒールの音がする。
それなりに長い距離を歩いたがすれ違う神官は1人もおらず、誰とも会わずに神殿長の部屋に着いた。
「神殿長、お客様をお連れしました」
神官が声を掛けると、どうぞと中から返事があった。
神官が重厚な扉を開くと、其処は神官にあるまじきようなごてごてと飾り立てた部屋だった。
「ようこそお越しくださいました王妃様?」
部屋に迎え入れた神殿長が胸に手を当てて頭を下げる。
恭しくも見えるが、決してこちらを敬っていないことがまるわかりだ。
「えぇ…先ずは…」
場所を替えたい。
こんな部屋では息が詰まってしまう。
ちらりと後ろに残っていた神官を見やると、神殿長は下がれと言わんはかりに手を振る。
すると、神官ははっとしてから頭を下げてさがっていった。
「先日、王子が来ましたね?その王子が消えた場所に案内をして頂戴」
王妃は神殿長を見据えるも、神殿長は軽く眉を上げただけで肩を竦めて見せた。
そんなことよりも新しい水属性を派遣したのかと言いたげな風貌。
怒りがこみ上げてくるのを抑えながら王妃は唇を軽く噛んだ。
そう言って王宮を発ったのは7日前の事。
急いで馬車を駆けさせて西の神殿がある街に着いたのは8日めの昼間だった。
辺境伯の屋敷に前日は泊まり、そこから半日の神殿に使いを出してから身支度をして向かった。
王妃としては少し簡素な格好も、辺境伯で借りた馬車も、今回はお忍びと伝えてあるため、出迎えた神官は変な顔をすること無く受け入れた。
「神殿長はいるかしら?」
「はい、お待ちになっておりますが…」
「わかっているわ。お忍びですもの。案内して頂戴」
王妃は先にたって歩く神官にゆっくりと着いていく。
見る人か見れば高貴な方だとわかるだろう。
白い石畳の廊下を歩く度にカツンカツンとヒールの音がする。
それなりに長い距離を歩いたがすれ違う神官は1人もおらず、誰とも会わずに神殿長の部屋に着いた。
「神殿長、お客様をお連れしました」
神官が声を掛けると、どうぞと中から返事があった。
神官が重厚な扉を開くと、其処は神官にあるまじきようなごてごてと飾り立てた部屋だった。
「ようこそお越しくださいました王妃様?」
部屋に迎え入れた神殿長が胸に手を当てて頭を下げる。
恭しくも見えるが、決してこちらを敬っていないことがまるわかりだ。
「えぇ…先ずは…」
場所を替えたい。
こんな部屋では息が詰まってしまう。
ちらりと後ろに残っていた神官を見やると、神殿長は下がれと言わんはかりに手を振る。
すると、神官ははっとしてから頭を下げてさがっていった。
「先日、王子が来ましたね?その王子が消えた場所に案内をして頂戴」
王妃は神殿長を見据えるも、神殿長は軽く眉を上げただけで肩を竦めて見せた。
そんなことよりも新しい水属性を派遣したのかと言いたげな風貌。
怒りがこみ上げてくるのを抑えながら王妃は唇を軽く噛んだ。
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