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第3章 気持ち
36話
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「では行くか」
二人でもぐもぐとしながら、大通りを曲がった。
うん、美味い。
鶸が食べ終わった残りの竹串を懐紙に包む。
ポイ捨て禁止!
「この路地を曲がって少し行くと…あの、暖簾の店だよ」
開いていて良かったと、ホッとしながら店の前まで来ると、先に鶸が暖簾をくぐる。
慣れない場所はいつも頭をぶつけないかひやひやするほど鶸の背は高いが、ぶつけているところを見ないから大丈夫なのだろう。
暖簾の向こうには色彩の波。
あぁ、やっぱり綺麗だなぁと思う。
「えっと…皆から欲しい色を書いてもらってるから…」
メモを取り出して中を開くと色毎に細かい指示がある。
無ければ注文をして取りに来るしかないのだけれど。
「皆、気合い入ってるなぁ…蓮と雀が大変だ。鶸、これってお店の人に任せて俺は自分の見たいんだけどいいかな」
細かい色味のニュアンスはわからないため、そうしていい?と、聞くと、鶸は頷いた。
店の女性に声を掛けて紙を渡し、似たものを選んでもらうのを任せてから、俺はゆっくりと違う場所を見る。
新しい髪留めも欲しい。
「何か欲しいのか?」
覗き込まれて囁かれると、俺は小さな髪留めを手にしていた。
「ちょっと女性っぽいかなぁ…」
「いや、似合うぞ?」
ひょいと取り上げられて、置かれていた鏡をを持たされると、色味だけでも見ていろと髪に添えられる。
白と山吹の組紐が蝶のように編まれたもの。
「じゃあ、これにしよう」
差し色にもいいかなと手を差し出すと、鶸はそのまま支払いをしてしまう。
「えっ…!」
差し出した手に乗せられた髪留め。
「や、払うからいいって!」
「さっきの団子の礼だ。どれ、付けてやろう?」
鶸は手際よく俺の髪を軽く纏めてハーフアップにする。
こういうところはまめで、モテる要素満載なんだよな。
「ありがとう」
「あぁ、そろそろ終わったようだな」
組紐を選んでいた店員が、丁度終わったようで、俺はそちらへ向かうと、皆の指示通りのものかを確認しながらかなりの本数の組紐を購入した。
かなりの数の購入だからと、二人でお揃いの根付けをプレゼントしてもらった。
決して安いものじゃないのに。
何に付けようかと考えながら歩いていると、ふと誰かに呼び止められる。
それは白銀の部下だった。
ぺこりと頭を下げると、屋敷に顔を出して欲しいと告げられて、今日は私的な用事で来ているからと告げる。
困ったようにおろおろした男をよそに鶸がそっと聞いてきた。
「例の…か」
「うん…1回逢ってみる?」
「鴇がいいならな」
どうやら鶸は白銀に興味があるらしい。
二人でもぐもぐとしながら、大通りを曲がった。
うん、美味い。
鶸が食べ終わった残りの竹串を懐紙に包む。
ポイ捨て禁止!
「この路地を曲がって少し行くと…あの、暖簾の店だよ」
開いていて良かったと、ホッとしながら店の前まで来ると、先に鶸が暖簾をくぐる。
慣れない場所はいつも頭をぶつけないかひやひやするほど鶸の背は高いが、ぶつけているところを見ないから大丈夫なのだろう。
暖簾の向こうには色彩の波。
あぁ、やっぱり綺麗だなぁと思う。
「えっと…皆から欲しい色を書いてもらってるから…」
メモを取り出して中を開くと色毎に細かい指示がある。
無ければ注文をして取りに来るしかないのだけれど。
「皆、気合い入ってるなぁ…蓮と雀が大変だ。鶸、これってお店の人に任せて俺は自分の見たいんだけどいいかな」
細かい色味のニュアンスはわからないため、そうしていい?と、聞くと、鶸は頷いた。
店の女性に声を掛けて紙を渡し、似たものを選んでもらうのを任せてから、俺はゆっくりと違う場所を見る。
新しい髪留めも欲しい。
「何か欲しいのか?」
覗き込まれて囁かれると、俺は小さな髪留めを手にしていた。
「ちょっと女性っぽいかなぁ…」
「いや、似合うぞ?」
ひょいと取り上げられて、置かれていた鏡をを持たされると、色味だけでも見ていろと髪に添えられる。
白と山吹の組紐が蝶のように編まれたもの。
「じゃあ、これにしよう」
差し色にもいいかなと手を差し出すと、鶸はそのまま支払いをしてしまう。
「えっ…!」
差し出した手に乗せられた髪留め。
「や、払うからいいって!」
「さっきの団子の礼だ。どれ、付けてやろう?」
鶸は手際よく俺の髪を軽く纏めてハーフアップにする。
こういうところはまめで、モテる要素満載なんだよな。
「ありがとう」
「あぁ、そろそろ終わったようだな」
組紐を選んでいた店員が、丁度終わったようで、俺はそちらへ向かうと、皆の指示通りのものかを確認しながらかなりの本数の組紐を購入した。
かなりの数の購入だからと、二人でお揃いの根付けをプレゼントしてもらった。
決して安いものじゃないのに。
何に付けようかと考えながら歩いていると、ふと誰かに呼び止められる。
それは白銀の部下だった。
ぺこりと頭を下げると、屋敷に顔を出して欲しいと告げられて、今日は私的な用事で来ているからと告げる。
困ったようにおろおろした男をよそに鶸がそっと聞いてきた。
「例の…か」
「うん…1回逢ってみる?」
「鴇がいいならな」
どうやら鶸は白銀に興味があるらしい。
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