上 下
36 / 44
第3章 気持ち

36話

しおりを挟む
「では行くか」

二人でもぐもぐとしながら、大通りを曲がった。
うん、美味い。
鶸が食べ終わった残りの竹串を懐紙に包む。
ポイ捨て禁止!

「この路地を曲がって少し行くと…あの、暖簾の店だよ」

開いていて良かったと、ホッとしながら店の前まで来ると、先に鶸が暖簾をくぐる。
慣れない場所はいつも頭をぶつけないかひやひやするほど鶸の背は高いが、ぶつけているところを見ないから大丈夫なのだろう。
暖簾の向こうには色彩の波。
あぁ、やっぱり綺麗だなぁと思う。

「えっと…皆から欲しい色を書いてもらってるから…」

メモを取り出して中を開くと色毎に細かい指示がある。
無ければ注文をして取りに来るしかないのだけれど。

「皆、気合い入ってるなぁ…蓮と雀が大変だ。鶸、これってお店の人に任せて俺は自分の見たいんだけどいいかな」

細かい色味のニュアンスはわからないため、そうしていい?と、聞くと、鶸は頷いた。
店の女性に声を掛けて紙を渡し、似たものを選んでもらうのを任せてから、俺はゆっくりと違う場所を見る。

新しい髪留めも欲しい。

「何か欲しいのか?」

覗き込まれて囁かれると、俺は小さな髪留めを手にしていた。

「ちょっと女性っぽいかなぁ…」

「いや、似合うぞ?」

ひょいと取り上げられて、置かれていた鏡をを持たされると、色味だけでも見ていろと髪に添えられる。
白と山吹の組紐が蝶のように編まれたもの。

「じゃあ、これにしよう」

差し色にもいいかなと手を差し出すと、鶸はそのまま支払いをしてしまう。

「えっ…!」

差し出した手に乗せられた髪留め。

「や、払うからいいって!」

「さっきの団子の礼だ。どれ、付けてやろう?」

鶸は手際よく俺の髪を軽く纏めてハーフアップにする。
こういうところはまめで、モテる要素満載なんだよな。

「ありがとう」

「あぁ、そろそろ終わったようだな」

組紐を選んでいた店員が、丁度終わったようで、俺はそちらへ向かうと、皆の指示通りのものかを確認しながらかなりの本数の組紐を購入した。
かなりの数の購入だからと、二人でお揃いの根付けをプレゼントしてもらった。

決して安いものじゃないのに。

何に付けようかと考えながら歩いていると、ふと誰かに呼び止められる。
それは白銀の部下だった。
ぺこりと頭を下げると、屋敷に顔を出して欲しいと告げられて、今日は私的な用事で来ているからと告げる。
困ったようにおろおろした男をよそに鶸がそっと聞いてきた。

「例の…か」

「うん…1回逢ってみる?」

「鴇がいいならな」

どうやら鶸は白銀に興味があるらしい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

某国の皇子、冒険者となる

くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。 転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。 俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために…… 異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。 主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。 ※ BL要素は控えめです。 2020年1月30日(木)完結しました。

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

処理中です...