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第3章 気持ち
35話
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あれから間もなく、俺は馬上の人となっていた。
通常よりも厚着をして肌を出さないようにしてから、鶸の胸の中にすっぽりと入っているのだ。
それってどうなの?と、思いながらも横向きに乗せられている。
いつもは背中にくっつかせてもらうのにな。
できるだけ風に当たらないようにとの配慮?らしいけれど。
「行ってくる」
蓮に見送られて鶸と一緒に屋敷を出た。
カポカポと馬の蹄の音がする。
ぬくい。
風はやはり冷たいけれど、風をきって走る訳ではなく、のんびりのんびりと馬は歩みを進めていく。
昨日歩いた道だけれど、馬上からだと眺めが違う。
「こら、あまり動くな?落とすことは無いが、危なっかしい」
ですよね!ごめんなさい。
鶸に言われて謝ると、大丈夫だと頭を撫でられた。
楽しく会話をしながら進むと、街へはあっという間に着いた。
賑やかな往来。
「鶸、あの路地を曲がった先に店があるから。降りようか」
馬から降りて、運んでくれてありがとうまた帰りもよろしくと馬の鼻先を撫でてやると、嬉しそうにブルルッと鳴いた。
「馬を預けるから待ってくれ」
宿屋を見つけると、鶸はそちらへと馬を預けに行った。
支払いをすれば馬丁が餌やりや水の給仕もしてくれるからだ。
それを見送って静かに待っている。
微かに漂う醤油の匂いに鼻が反応して辺りを見回すと、団子屋がある。
美味そう。
ふらふらと引き寄せられるように歩いた店先で、団子を焼くおじさんに、声をかけた。
「みたらしと醤油1本ずつね」
まいど!という元気な声に小銭を払い左右に1本ずつ団子を持っ。
鶸が来たら半分こしよう。
そう思いながら立っていると、ツンと服の裾を引かれて下を向くと、小さな少女が立っていた。
じっと見つめるのは俺ではなく団子のようで、苦笑を浮かべると膝を屈め甘い方、みたらしを差し出すと嬉しそうに受け取った。
気を付けて食えよと言うと、その場でぱくりとかぶりつく。
うまうまっとあっという間に食べきった少女は、ありがとと頭を下げてから何処かへと駆けていった。
「可愛らしいな」
タイミングを見計らうように戻ってきた鶸。
何処かから見ていたらしい。
「うん。だから、こっちはんぶんこな?」
「食べていいのか?」
「うん。ほら」
差し出した竹串に鶸はそのままぱくりと団子を口に入れる。
あれ、受け取って食べればいいのにね。
綺麗に食べる姿にイケメンだなと思いながら自分も団子を口にする。
これも間接キスに…ならないか。
通常よりも厚着をして肌を出さないようにしてから、鶸の胸の中にすっぽりと入っているのだ。
それってどうなの?と、思いながらも横向きに乗せられている。
いつもは背中にくっつかせてもらうのにな。
できるだけ風に当たらないようにとの配慮?らしいけれど。
「行ってくる」
蓮に見送られて鶸と一緒に屋敷を出た。
カポカポと馬の蹄の音がする。
ぬくい。
風はやはり冷たいけれど、風をきって走る訳ではなく、のんびりのんびりと馬は歩みを進めていく。
昨日歩いた道だけれど、馬上からだと眺めが違う。
「こら、あまり動くな?落とすことは無いが、危なっかしい」
ですよね!ごめんなさい。
鶸に言われて謝ると、大丈夫だと頭を撫でられた。
楽しく会話をしながら進むと、街へはあっという間に着いた。
賑やかな往来。
「鶸、あの路地を曲がった先に店があるから。降りようか」
馬から降りて、運んでくれてありがとうまた帰りもよろしくと馬の鼻先を撫でてやると、嬉しそうにブルルッと鳴いた。
「馬を預けるから待ってくれ」
宿屋を見つけると、鶸はそちらへと馬を預けに行った。
支払いをすれば馬丁が餌やりや水の給仕もしてくれるからだ。
それを見送って静かに待っている。
微かに漂う醤油の匂いに鼻が反応して辺りを見回すと、団子屋がある。
美味そう。
ふらふらと引き寄せられるように歩いた店先で、団子を焼くおじさんに、声をかけた。
「みたらしと醤油1本ずつね」
まいど!という元気な声に小銭を払い左右に1本ずつ団子を持っ。
鶸が来たら半分こしよう。
そう思いながら立っていると、ツンと服の裾を引かれて下を向くと、小さな少女が立っていた。
じっと見つめるのは俺ではなく団子のようで、苦笑を浮かべると膝を屈め甘い方、みたらしを差し出すと嬉しそうに受け取った。
気を付けて食えよと言うと、その場でぱくりとかぶりつく。
うまうまっとあっという間に食べきった少女は、ありがとと頭を下げてから何処かへと駆けていった。
「可愛らしいな」
タイミングを見計らうように戻ってきた鶸。
何処かから見ていたらしい。
「うん。だから、こっちはんぶんこな?」
「食べていいのか?」
「うん。ほら」
差し出した竹串に鶸はそのままぱくりと団子を口に入れる。
あれ、受け取って食べればいいのにね。
綺麗に食べる姿にイケメンだなと思いながら自分も団子を口にする。
これも間接キスに…ならないか。
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