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第3章 気持ち

34話

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「あー…おはよう鶸」

すっぽりと包まれた腕の中で目を覚まし、最近こんなことばかりだなと思いながら、鶸に声を掛ける。
窓の向こうはもう空が白み始めている。

「おはよう。眠れたのか?」

「うん。鶸があたたかかったからね?」

誰かのぬくもりは幸せになる。
もっとぬくもりを感じていたいけれど、そうもいかずに俺はむくりと起き出した。

「やっぱり寒い…」

いつの間にか鶸が入れてくれたのだろう火鉢の中に墨が赤々とついていて、そこだけはほっこりと暖かかった。

「病み上がりだから寝ていていい。討伐には他の者を行かせるから」

「えっ、また討伐依頼?最近多い気がするんだけど」

「そうだな、少しずつ増えているし、異形が力を増しているのか複数であたらなければ討伐が難しくなってきている」

「あ、そうだ!昨日蓮に頼んであるんだけど、組紐と根付けを人数分買って、蓮に浄化の力を込めて貰っているから、1人1本渡して貰うな?」

蜜柑と俺は先に着けていたけれど。

「ほう、私にも…か?」

「うん、鶸にも選んだよ?気に入ってくれるといいんだけど…」

「ならば、組紐か根付けのどちらかを鴇のものと交換したい」

ふえっ!?
いや、パーソナルカラーってあるじゃん?
鶸が俺の深紅つけてるって、微妙じゃね?
きょとんとしてしまった俺を鶸は抱き寄せる。

「蓮と雀は互いのものを交換したと聞いた。私も鴇のものが欲しい。両方でなくていい…どちらかが欲しい」

「えっ…と…」

あげるのは構わないよ…だけどさ、他に欲しい人…いないだろうけどさ…

「じゃ、じゃあ俺の…じゃなくてさ、同じ色のを買ってくるから、2つ纏めて付けるとかじゃダメ?」

全員にアンケートを取って購入しに行こうかなと考えていた。

「それでもいいな。よし、では今日にでも買いに行くか」

鶸が差し出した手を繋いでしまって。
あれ、一緒に行く気配?

「行くなら馬を出してもいい」

「馬!」

馬と言われると、心踊ってしまう。
乗馬は好きなんだ。
と言うか、動物が好き。
それに、鶸の愛馬は大きくて力持ちだが凄く優しい子なんだ。
歩くと半日近くの道のりを馬だとその半分以下の時間で行けるから、ゆっくりと見て回れる。

「い、行きたい…」

「決まりだな」

暖かい格好をして乗るんだそと言われ、寒さで動かなかった手足を布団から出すと、俺は漸く着替えに自室に向かうのだった。
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