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第3章 気持ち

33話

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目が覚めた先にあったのは温かい体温。
部屋の中が薄暗く、部屋の隅で微かに蝋燭が灯っていた。

「どうかしたか?」

「鶸?」

「あぁ、大丈夫か?」

何故か今はすっぽりと鶸の腕に包まれ、ぬくぬくとしていた。
布越しだが、ほかほかした鶸の体温に幸せになるが、頬に触れた鶸の掌に冷たいと俺は悲鳴を上げた。

「悪い…熱は下がったな?」

そう言われると、顔の火照りはもうなかったが、鶸の異様なまでの手の冷たさが気になり、視線をずらすと自分の頭の上に桶があり、そこに手拭いが掛かっている。
あれ…

「鶸…もしかして」

そっと背中に手を隠そうとする鶸の腕を掴んでから指先へと熱を辿る。
冷たくなっているのは掌から先だけ。

「鶸!指先がこれ、もう感覚無いだろ!」

噛みつくように声をあらげた俺に、鶸は苦笑する。
たぶん手拭いで俺の額を冷やしていたが、何らかの理由で自分の手を水に浸けて俺の額を冷やしたのだろう。

「冷たい…っこんなになるまでやるなよっ…鶸」

俺は慌てて鶸の手を両手で包む。
氷のように冷たい指先に息を吹き掛けてやるも、暖かさは戻らない。
俺は意を決して鶸の手を自分の浴衣の下に突っ込んだ。

「くぅっ…」

胸の辺りに触れる指が冷たくて俺は小さく身悶えたが、仕方無い。
ぎゅうぎゅう握りしめると、ふふっと頭上で鶸が笑う。
このやろう!

「鴇、余計に風邪をひくぞ?だから、大丈夫だ」

鶸が手を引き、その代わりに腰を抱き寄せられた。
密着する身体に一瞬顔が赤くなるが鶸はそれ以上なにもして来ないため、他人の体温には抗えず俺はすぐに寝落ちるのだった。
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