【完結】【BL】月下~乙女ゲームの世界に転生したが、何故か俺は攻略対象から求婚されています。

梅花

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第2章 退魔

24話

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「へぇ、別嬪さんじゃねぇか」

男達の下卑た笑い。
男の俺でも背筋がぞくりと震える。
闇の中からうっそりと現れたような男ども。
その気配は人間だから俺達の使う退魔術は使えない。

「蓮、行って?」

静かに俺は蓮に話しかける。
勝算はないけれど、女の子に傷がついちゃいけないし?
まぁ、5人の男を相手にして無傷でいられる訳がないと、覚悟はしなきゃね。

それに、俺身体が動くかなぁ。

鴇になる前、現代では身体を鍛える為に空手をやっていた。
そもそも武器を持つ相手に向かっていった事はないし、そのために習っていた訳じゃない。
それに、空手をやらなくなってから数年経っている。
鴇の身体が武器の使い方を覚えていればいいんだけどなぁ。
ほら、ここに来たのは鶸の弟子の蜜柑もいるし俺そんなに戦わなくていいかもなんて思ってたからさぁ?

「宿に着いたら蜜柑呼んでくれると嬉しいかな?」

「でも…」

「大丈夫だって。俺男だし?砂を繰り上げたら振り返らずに走って」

小さな声で蓮に話しかける。

「御前ら何をこそこそ喋ってんだ?逃げられねぇからな?」

頭領と思われる男が短刀を抜いた。
威嚇だといいなぁなんて思ったけど…それに合わせて他の男たちも匕首あいくちを抜いた。
あー…駄目だなこれ。

「蓮!」

俺は砂を蹴りあげる。
石礫が舞って蓮が大通りへ走り出したのを確認して俺は息を吐いた。

「ってぇ!」

石が当たったのだろう、一番前の男が声をあげるのを、静かに見やりながらゆっくりと間合いを取る。
焦ったら駄目だ。
俺は下がるが男どもはじりじりと前進してきてだんだんと距離が詰まる。

「最近、この辺りで女性ばかりが神隠しに合うのは御前らのせいか?」

俺は聞いてみる。
素直に答えてくれるかはわからないけれど。
まぁ、答えてくれな…

「まぁな。俺達が美味しくいただいてから…なぁ?」

答えてくれちゃったよ!
じゃあ、こいつら何とかすりゃいいのか?でも、橋の向こうに嫌な感覚がある。全部が全部こいつらのせいと言えないのかもしれないし…
でも、こいつらがいなくなれば犠牲は減るかなぁ…
色々と考えながら、俺はするりと袖の中から平たい帯状のものを取り出す。
長さとすると、ハチマキくらいのものを半分に畳み端を持ってゆっくりと縦回転で振り回す。
紐のひゅんひゅんと風を切る音がしていた。

てか、白銀…こいつらこそ捕まえなきゃダメなやつだろ。
職務怠慢だ!
俺は心の中で叫びながら軽く片足を引いた。
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