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第1章 転生
17話
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事務連絡
主人公の女装シーンがありますので、苦手な方はスルーしてください。
☆☆☆☆☆☆☆
紅を引かれて手鏡を渡されると、俺はその中を覗き込む。
どんな醜女ができているのかと純粋な興味からだった。
「あれ、それなりに見れる?」
呟いた俺に、藍がそうだろう?と、何故か誇らしげに言った。
藍が使う化粧道具と変装に使うための長襦袢。
今回のコンセプトはどうやら花魁のようだ。
もちろん花魁のようなきらびやかな着物や帯もなく、髪に挿す簪も、それだけの長さの髪もないが、艶やかな化粧と緋色の長襦袢からそう見えてしまう。
「綺麗にできた」
満足げに笑う藍は化粧道具を片付け始める。
「やるならもっとしっかりした装備があるときにやって欲しかったなぁ」
少しだけ残念そうに笑った藍。
マジか。
あー…まぁ、俺も乙女ゲームの攻略対象だもんなぁ、整った顔をしてはいる。
が、女顔かと言われると違うと思う。
だって、主人公より可愛い攻略対象って、違うよねぇ?
ちらりと横目に見た姿見。自分の燃え立つような赤い髪に襦袢という色味を抑えるのが化粧を乗せた白い肌。
たぶん、蓮辺りが着た方が綺麗に見えるだろうなとは思う。
「でも、すっごい綺麗だなぁ」
片付け終わった藍に背中から抱き締められる。
首筋に触れた藍の鼻先に、俺はひぇっと声を上げた。
実は首や脇などが弱かったりする。
「ん?」
「くすぐったいから、離れろって…藍!」
「やだ。時間あんまりねぇし、少しでもくっついてたい」
何だ…俺よりでかいのに可愛い?
つかちょっと待て、手を突っ込んでくるな。
「やめろって…」
くすぐったいんだって…うわっ!
ぞぞぞっと身体に電気か走る。
ぞくぞくっと身体が震えて膝から力が抜けた。
そんな俺を支えてから藍はそのまま寝室へ向かう。
今夜はこの格好で眠るのだろうか。
いや、藍は仕事がある筈なんだ…。
すとんと座らされた寝具の上。
「鴇、ちょっとだけ…な?」
何がちょっとだけなんだか。
膝をついた藍がじりじりと距離をつめてくる。
全く…。
「藍、口吸いまでな?」
「ずるい。紫苑や鶯にはほかにもさせたり、したりしたくせに…俺は駄目なのか?」
するりと抱き締められてから、襦袢の上から尻の辺りを撫でられる。
そもそも何でそんなことを知っているんだ!
「琥珀にここも許したんだろ?」
耳許で囁かれる低い声に俺は藍の胸を押し返す。
言葉にされると否が応でも思い出してしまうのだ。
「厭らしい事を言うな。治療だったってわかってるんだろ?」
「知っているけど、話は別だ。俺だって鴇の可愛い姿を見たい…」
布団に押し倒されて腰の前で結われた帯を軽く引かれてしまうと簡単に袷が開きひやりとした空気が肌に触れる。
「可愛いって、皆、視力がおかしい…っちょっ…」
藍の唇が首筋に触れる。
押さえつけられるような重さに身体を逃がす事ができなくて俺は喉を逸らした。
「…はぁ…時間切れ…か」
そう呟いた藍の身体が移動して軽くなると、残念そうに笑った藍は窓から外を見た。
「布団、使っていいから」
唇に軽く口吻けると藍はひらひらと手を振ってから、押入れの行李から風呂敷を取り出した。
「鴇、行ってくるけど、次の機会にはちゃんと色々するからな?」
そういい放つと藍は足音をさせずに部屋を出ていく。
俺はぽかんとして藍を見送ったが、小さなくしゃみをするとあわててその布団に潜るのだった。
主人公の女装シーンがありますので、苦手な方はスルーしてください。
☆☆☆☆☆☆☆
紅を引かれて手鏡を渡されると、俺はその中を覗き込む。
どんな醜女ができているのかと純粋な興味からだった。
「あれ、それなりに見れる?」
呟いた俺に、藍がそうだろう?と、何故か誇らしげに言った。
藍が使う化粧道具と変装に使うための長襦袢。
今回のコンセプトはどうやら花魁のようだ。
もちろん花魁のようなきらびやかな着物や帯もなく、髪に挿す簪も、それだけの長さの髪もないが、艶やかな化粧と緋色の長襦袢からそう見えてしまう。
「綺麗にできた」
満足げに笑う藍は化粧道具を片付け始める。
「やるならもっとしっかりした装備があるときにやって欲しかったなぁ」
少しだけ残念そうに笑った藍。
マジか。
あー…まぁ、俺も乙女ゲームの攻略対象だもんなぁ、整った顔をしてはいる。
が、女顔かと言われると違うと思う。
だって、主人公より可愛い攻略対象って、違うよねぇ?
ちらりと横目に見た姿見。自分の燃え立つような赤い髪に襦袢という色味を抑えるのが化粧を乗せた白い肌。
たぶん、蓮辺りが着た方が綺麗に見えるだろうなとは思う。
「でも、すっごい綺麗だなぁ」
片付け終わった藍に背中から抱き締められる。
首筋に触れた藍の鼻先に、俺はひぇっと声を上げた。
実は首や脇などが弱かったりする。
「ん?」
「くすぐったいから、離れろって…藍!」
「やだ。時間あんまりねぇし、少しでもくっついてたい」
何だ…俺よりでかいのに可愛い?
つかちょっと待て、手を突っ込んでくるな。
「やめろって…」
くすぐったいんだって…うわっ!
ぞぞぞっと身体に電気か走る。
ぞくぞくっと身体が震えて膝から力が抜けた。
そんな俺を支えてから藍はそのまま寝室へ向かう。
今夜はこの格好で眠るのだろうか。
いや、藍は仕事がある筈なんだ…。
すとんと座らされた寝具の上。
「鴇、ちょっとだけ…な?」
何がちょっとだけなんだか。
膝をついた藍がじりじりと距離をつめてくる。
全く…。
「藍、口吸いまでな?」
「ずるい。紫苑や鶯にはほかにもさせたり、したりしたくせに…俺は駄目なのか?」
するりと抱き締められてから、襦袢の上から尻の辺りを撫でられる。
そもそも何でそんなことを知っているんだ!
「琥珀にここも許したんだろ?」
耳許で囁かれる低い声に俺は藍の胸を押し返す。
言葉にされると否が応でも思い出してしまうのだ。
「厭らしい事を言うな。治療だったってわかってるんだろ?」
「知っているけど、話は別だ。俺だって鴇の可愛い姿を見たい…」
布団に押し倒されて腰の前で結われた帯を軽く引かれてしまうと簡単に袷が開きひやりとした空気が肌に触れる。
「可愛いって、皆、視力がおかしい…っちょっ…」
藍の唇が首筋に触れる。
押さえつけられるような重さに身体を逃がす事ができなくて俺は喉を逸らした。
「…はぁ…時間切れ…か」
そう呟いた藍の身体が移動して軽くなると、残念そうに笑った藍は窓から外を見た。
「布団、使っていいから」
唇に軽く口吻けると藍はひらひらと手を振ってから、押入れの行李から風呂敷を取り出した。
「鴇、行ってくるけど、次の機会にはちゃんと色々するからな?」
そういい放つと藍は足音をさせずに部屋を出ていく。
俺はぽかんとして藍を見送ったが、小さなくしゃみをするとあわててその布団に潜るのだった。
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