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第1章 転生
10話
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「鴇、早いな」
紫苑と一緒に眠って、小鳥の囀りで目を覚ますと
隣で目を覚ました紫苑のおねだりで軽い口吻をしてから顔を洗いに廊下にでると、袖を襷掛けにして木刀を持った蜜柑と顔を合わせる。
「はよ。蜜柑も…朝稽古か?」
「あぁ、師範とな」
「鶸とか、毎日大変だな…無理するなよ」
滴る汗を手拭いで拭く所作はやはり色っぽい。
「あぁ、鴇は………」
「あ、紫苑のところから帰るところ…昨日は髪を洗ってくれてありがとな?助かったよ」
蜜柑の視線が何となく浴衣の併せの辺りを見ている気がして自分も視線を下ろすが特に何もある訳じゃない。
まさかキスマークか!と思ったが紫苑にはそんなことはさせていないしと、蜜柑を見上げると視線を逸らされた。
「ま、今度一緒に風呂入ったら、俺が洗ってやるから」
「あ?誰が一緒に風呂だって?」
蜜柑とは違う方向から声がする。振り向こうとしたが
「鴇、今朝もまた美人だな」
がしっと肩に腕を回されて体重をかけられる。
う。若干重い。
「こら、藍、鴇が重そうだ!」
慌てて止めに入った蜜柑は、藍と呼ばれた男の腕を剥がしにかかる。
蜜柑とそんなに背格好は変わらないが、性格は真逆だと思う。
深い青の色をした髪が肩につかない程度で切られ、毛先は縦横無尽に跳ねている。
「ん、久し振りだな藍…今朝来たのか?」
「いや、昨日の夜、鴇が紫苑とイチャイチャしてる時にな」
「なっ!」
「してねぇよ!」
藍の言葉に頬を染めた蜜柑。
こう言う会話は苦手なのを知っている。
真面目でちょっと固い性格で、まっすぐだ。
「二人で同じ布団に寝りゃイチャイチャだろ?」
「あー…紫苑は小さいから二人で寝たって大丈夫なんだよ!ただ一緒に寝ただけでヤってねぇ」
「ん?ナニをだ?」
「ったく!」
ぽこんと軽く藍の頭を小突くと、こんな会話でも何を想像したのか蜜柑の顔は真っ赤だ。
「ま、お仕事ご苦労様。翠の食事ができるまでゆっくりしたら?俺も顔を洗ったら手伝いに行くつもり。蜜柑も風呂行くんだろ?さっぱりして朝飯にしようぜ?じゃ、顔を洗ってくる」
風呂は湯殿だが、顔を洗ったり歯を磨くのは外の井戸なのだ。
風呂場に洗面所があった現代は一回で済むけど、朝井戸に行くまでが面倒くさいし冬場は死にそうになるくらい水が冷たい…らしい。まだ経験してないから知らないけどな。
背後で二人が何やら言っていたが俺はそのまま井戸に向かい、手押しポンプで水を汲み上げる。
釣瓶じゃなくて良かったよ…あれ、昔体験したけどなにげに技術が必要なんだよな。
汲み上げた水で顔を洗うと手拭いで顔を拭く。
「…早いな」
「師匠!おはようございます」
声だけでわかる。
鶸だ。
ガシガシとポンプを押して水を汲み上げると一気に頭からかぶる。
ちょっと待って!まだ水は冷たかったよ?
「師匠!冷たいって!」
「む、掛かってしまったか?」
「違うって、頭からかぶるにはまだ水が冷たいんだって!やるなら風呂に入りなよ。風邪ひいちゃうってば」
「…問題ない」
もう、問題ないって、無いわけないっつーの。
心の中で突っ込みながら、自分の使っていた手拭いで顔を拭いてやる。
「蜜柑と稽古はわかるけど、まだ時間があるから一緒にお風呂行ってきてください!」
ビシッと湯殿に向けて指をさすと、鶸は苦笑して手拭いを受けとる。
鶸は借りていくと言いながらそのまま俺の手拭いを綺麗に畳みながら湯殿経向かっていった。
紫苑と一緒に眠って、小鳥の囀りで目を覚ますと
隣で目を覚ました紫苑のおねだりで軽い口吻をしてから顔を洗いに廊下にでると、袖を襷掛けにして木刀を持った蜜柑と顔を合わせる。
「はよ。蜜柑も…朝稽古か?」
「あぁ、師範とな」
「鶸とか、毎日大変だな…無理するなよ」
滴る汗を手拭いで拭く所作はやはり色っぽい。
「あぁ、鴇は………」
「あ、紫苑のところから帰るところ…昨日は髪を洗ってくれてありがとな?助かったよ」
蜜柑の視線が何となく浴衣の併せの辺りを見ている気がして自分も視線を下ろすが特に何もある訳じゃない。
まさかキスマークか!と思ったが紫苑にはそんなことはさせていないしと、蜜柑を見上げると視線を逸らされた。
「ま、今度一緒に風呂入ったら、俺が洗ってやるから」
「あ?誰が一緒に風呂だって?」
蜜柑とは違う方向から声がする。振り向こうとしたが
「鴇、今朝もまた美人だな」
がしっと肩に腕を回されて体重をかけられる。
う。若干重い。
「こら、藍、鴇が重そうだ!」
慌てて止めに入った蜜柑は、藍と呼ばれた男の腕を剥がしにかかる。
蜜柑とそんなに背格好は変わらないが、性格は真逆だと思う。
深い青の色をした髪が肩につかない程度で切られ、毛先は縦横無尽に跳ねている。
「ん、久し振りだな藍…今朝来たのか?」
「いや、昨日の夜、鴇が紫苑とイチャイチャしてる時にな」
「なっ!」
「してねぇよ!」
藍の言葉に頬を染めた蜜柑。
こう言う会話は苦手なのを知っている。
真面目でちょっと固い性格で、まっすぐだ。
「二人で同じ布団に寝りゃイチャイチャだろ?」
「あー…紫苑は小さいから二人で寝たって大丈夫なんだよ!ただ一緒に寝ただけでヤってねぇ」
「ん?ナニをだ?」
「ったく!」
ぽこんと軽く藍の頭を小突くと、こんな会話でも何を想像したのか蜜柑の顔は真っ赤だ。
「ま、お仕事ご苦労様。翠の食事ができるまでゆっくりしたら?俺も顔を洗ったら手伝いに行くつもり。蜜柑も風呂行くんだろ?さっぱりして朝飯にしようぜ?じゃ、顔を洗ってくる」
風呂は湯殿だが、顔を洗ったり歯を磨くのは外の井戸なのだ。
風呂場に洗面所があった現代は一回で済むけど、朝井戸に行くまでが面倒くさいし冬場は死にそうになるくらい水が冷たい…らしい。まだ経験してないから知らないけどな。
背後で二人が何やら言っていたが俺はそのまま井戸に向かい、手押しポンプで水を汲み上げる。
釣瓶じゃなくて良かったよ…あれ、昔体験したけどなにげに技術が必要なんだよな。
汲み上げた水で顔を洗うと手拭いで顔を拭く。
「…早いな」
「師匠!おはようございます」
声だけでわかる。
鶸だ。
ガシガシとポンプを押して水を汲み上げると一気に頭からかぶる。
ちょっと待って!まだ水は冷たかったよ?
「師匠!冷たいって!」
「む、掛かってしまったか?」
「違うって、頭からかぶるにはまだ水が冷たいんだって!やるなら風呂に入りなよ。風邪ひいちゃうってば」
「…問題ない」
もう、問題ないって、無いわけないっつーの。
心の中で突っ込みながら、自分の使っていた手拭いで顔を拭いてやる。
「蜜柑と稽古はわかるけど、まだ時間があるから一緒にお風呂行ってきてください!」
ビシッと湯殿に向けて指をさすと、鶸は苦笑して手拭いを受けとる。
鶸は借りていくと言いながらそのまま俺の手拭いを綺麗に畳みながら湯殿経向かっていった。
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