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16話
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無事にギルドに荷運びの登録をすると、商船が到着するのは明日とのこと。
やる事は、荷物の積み降ろし。
船が到着してからの作業になるため、船の到着は汽笛で知らせるとの事だった。
「良かった、俺でもできる仕事があって」
何も無ければ他に探さないといけないかもと思っていたところだ。
「良かったね、じゃあデートしようか。まだジルはこの街の色々なところ行ったこと無いよね?寒いけど歩ける?あたたかい飲み物でも買ってから行こうか」
手を繋いだまま大通りを歩き、一軒の店の前で足を止めた。
「ジルは何がいい?私は甘めのミルクティー」
「俺も同じものでいいよ?」
「じゃあ、ミルクティーふたつとこれも」
ティオが指さしたのはお店の入口にあるケース。
「はい、ミルクティーおふたつと、パオはひとつでよろしいですか?」
「はい」
ティオが支払いをして渡してくれたのは紙のコップに入ったミルクティーとパオと呼ばれた丸いパンだった。
パオからはほかほかと湯気が上がっており、直接触れないようにと紙で包んであった。
「え?」
「食べてみて?美味しいから。でも、熱いかもしれないから何処かに座ろうか」
俺は両手に物を持ちながらティオの少し後を追い掛けると、小さな公園のベンチがあった。
「あそこでいいかな?」
ティオに促され、木で出来たベンチに腰掛ける。
「ジル、食べてご覧?美味しいよ?」
促された俺はティオと並んで座るとティオはミルクティーを口にした。
「あー……美味しい」
ホッとした表情を浮かべるティオが美人だなと思う。
「いただきます」
俺は紙コップを置くと、パオをふたつに割った。
「ティオ、半分こしよ?ふたりで食べた方が美味しいよ?」
割った片方をティオに差し出すとティオは笑みを浮かべて受け取った。
「いただきます。ん、本当だ美味しい」
俺はパオにかぶりつく。
ふわりと口の中に広がる肉の旨味と柔らかな皮。
初めての食感と味に俺は驚きながらもぐもぐとパオを食べながらミルクティーを飲んでいった。
「美味しかった。ご馳走さま身体があたたまったよ」
少し気温の低くなってきた季節。
「私も美味しかったよ」
ティオも少し遅れてミルクティーを飲み干すとくしゃりと紙コップを握り潰す。
「あ、あの船かな……明日の荷物を下ろす船」
ティオが水平線の方を見ると、ぽつりと黒い点が見えた気がした。
「今日中に入港するのかな……見てみたい。俺、船ってあまり見た事なくてさ?山育ちだから、海もこの街で見たのが初めてなんだ」
船がどんなものかわからない俺は心が踊るのだった。
やる事は、荷物の積み降ろし。
船が到着してからの作業になるため、船の到着は汽笛で知らせるとの事だった。
「良かった、俺でもできる仕事があって」
何も無ければ他に探さないといけないかもと思っていたところだ。
「良かったね、じゃあデートしようか。まだジルはこの街の色々なところ行ったこと無いよね?寒いけど歩ける?あたたかい飲み物でも買ってから行こうか」
手を繋いだまま大通りを歩き、一軒の店の前で足を止めた。
「ジルは何がいい?私は甘めのミルクティー」
「俺も同じものでいいよ?」
「じゃあ、ミルクティーふたつとこれも」
ティオが指さしたのはお店の入口にあるケース。
「はい、ミルクティーおふたつと、パオはひとつでよろしいですか?」
「はい」
ティオが支払いをして渡してくれたのは紙のコップに入ったミルクティーとパオと呼ばれた丸いパンだった。
パオからはほかほかと湯気が上がっており、直接触れないようにと紙で包んであった。
「え?」
「食べてみて?美味しいから。でも、熱いかもしれないから何処かに座ろうか」
俺は両手に物を持ちながらティオの少し後を追い掛けると、小さな公園のベンチがあった。
「あそこでいいかな?」
ティオに促され、木で出来たベンチに腰掛ける。
「ジル、食べてご覧?美味しいよ?」
促された俺はティオと並んで座るとティオはミルクティーを口にした。
「あー……美味しい」
ホッとした表情を浮かべるティオが美人だなと思う。
「いただきます」
俺は紙コップを置くと、パオをふたつに割った。
「ティオ、半分こしよ?ふたりで食べた方が美味しいよ?」
割った片方をティオに差し出すとティオは笑みを浮かべて受け取った。
「いただきます。ん、本当だ美味しい」
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「美味しかった。ご馳走さま身体があたたまったよ」
少し気温の低くなってきた季節。
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「あ、あの船かな……明日の荷物を下ろす船」
ティオが水平線の方を見ると、ぽつりと黒い点が見えた気がした。
「今日中に入港するのかな……見てみたい。俺、船ってあまり見た事なくてさ?山育ちだから、海もこの街で見たのが初めてなんだ」
船がどんなものかわからない俺は心が踊るのだった。
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