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「いらっしゃいませ……って、ジル?どうしたの」
店の扉を開けた俺にティオの元気な声が掛かったが、一瞬でそのトーンは下がり俺を気遣う声音になった。
「うん、家が借りれなくてさ……ティオの宿は一日いくらで泊まらせてくれる?」
俺は戻った理由を伝えた。
「ギルは仕事を見付けられたの?」
ティオの問い掛けに、俺は頷いてから苦笑を浮かべる。
「エーリさんのとこのランドリー手伝いを紹介して貰ったんだ。宿のリネン回収とか、街の中心から外れた宿のリネンを回収するのと、終わったら洗濯だって。
難しくはない仕事らしいんだけど⋯⋯」
「あぁ、エーリさんの?じゃあ、うちに泊まるといいよ。そうすれば出勤時にウチのリネンを持って行けるし、剥ががしてセッティングまでしてくれるならウチからもバイト代を少しだけど出すよ?」
ティオの申し出は渡りに船だった。
かなり有難い申し出だがティオに負担をかけないだろうかと不安になる。
「え?」
「どう?やってみて辛かったら辞めていいから、流石に宿泊施設に泊めることはできないから私と一緒にルームシェアだけどいいよね?
ちょっと待って。夕飯食べたら私のプライベートルームを案内するね……でも、早い方がいいかな。
ギル悪いけどもう一度プレートをクローズにしてきて、そうしたらこっちから案内するよ」
まだ、バイトをするとも言っていないのにティオは話を進めてしまう。
「ほら、ギルお願い」
カウンターの中からティオに頼まれて俺は慌てて入口のプレートをクローズにした。
「ほら、個人的な住居はこっち」
カウンターの脇の扉を潜り、廊下を少し進んだ先にあった扉を抜けると、そこは完全なプライベート空間だった。
店の内部のような可愛らしさは全くないシンプルだが使いやすそうな空間だった。
自宅から濡れずに来れるのはいいなぁとか、ついそんなことを考えながら俺はティオから少し離れてついていく。
扉を抜けてから数段の階段を上がると、ダイニングキッチンとその隣にはリビング。
廊下を挟んでティオ曰く水周りを良くしたバス・トイレが個々に設置してある。
奥の部屋は寝室で、それなりの広さはあるから一緒でいいなら寝られるよと言われた……寝るって同じ寝台に?
「だって、ギルはそんなに大きくないから一緒に寝ても落とされなさそうだし、リビングのソファーだと身体が痛くなるよ?寝室見て寝台のサイズを確認してからでも大丈夫だから」
どうぞと、ティオに促されるまま俺は扉を開く。
後ろから来たティオが壁に触れると明かりが点いた。
ぱあっと明るくなった部屋の中に大きな寝台。
一人で寝るにはかなり大きくないかと思うくらいのサイズ。
ティオはそこまで大柄では無いから何でだろうと不思議に思いながらも、その寝台の端っこを貸して貰えるなら有り難いかなと後ろに立つティオを見た。
「ティオの邪魔にならなけられば、お願いしてもいい?
俺、料理は苦手だけど掃除とか洗濯とかするし、ある程度の家賃が貯まるまででいいから、寝相悪かったら……床でもいいけど」
「ジルは寝相悪いの?」
「一緒に寝てても言われた事はないけど……?」
「……一緒に寝る人がいたの?」
「うん。兄弟五人いたからさ、雑魚寝だったよ?」
一瞬聞こえたティオの声が低くなった気がしたが、ティオを見るとティオはニコニコと笑みを浮かべていた。
「そっか、兄弟なら仕方ないね」
「うん?」
本当にティオの言っている意味がわからない。
けれど、ティオが泊まっていきなと言ってくれて、俺はホッと胸を撫で下ろした。
今夜の夜露は凌げると。
店の扉を開けた俺にティオの元気な声が掛かったが、一瞬でそのトーンは下がり俺を気遣う声音になった。
「うん、家が借りれなくてさ……ティオの宿は一日いくらで泊まらせてくれる?」
俺は戻った理由を伝えた。
「ギルは仕事を見付けられたの?」
ティオの問い掛けに、俺は頷いてから苦笑を浮かべる。
「エーリさんのとこのランドリー手伝いを紹介して貰ったんだ。宿のリネン回収とか、街の中心から外れた宿のリネンを回収するのと、終わったら洗濯だって。
難しくはない仕事らしいんだけど⋯⋯」
「あぁ、エーリさんの?じゃあ、うちに泊まるといいよ。そうすれば出勤時にウチのリネンを持って行けるし、剥ががしてセッティングまでしてくれるならウチからもバイト代を少しだけど出すよ?」
ティオの申し出は渡りに船だった。
かなり有難い申し出だがティオに負担をかけないだろうかと不安になる。
「え?」
「どう?やってみて辛かったら辞めていいから、流石に宿泊施設に泊めることはできないから私と一緒にルームシェアだけどいいよね?
ちょっと待って。夕飯食べたら私のプライベートルームを案内するね……でも、早い方がいいかな。
ギル悪いけどもう一度プレートをクローズにしてきて、そうしたらこっちから案内するよ」
まだ、バイトをするとも言っていないのにティオは話を進めてしまう。
「ほら、ギルお願い」
カウンターの中からティオに頼まれて俺は慌てて入口のプレートをクローズにした。
「ほら、個人的な住居はこっち」
カウンターの脇の扉を潜り、廊下を少し進んだ先にあった扉を抜けると、そこは完全なプライベート空間だった。
店の内部のような可愛らしさは全くないシンプルだが使いやすそうな空間だった。
自宅から濡れずに来れるのはいいなぁとか、ついそんなことを考えながら俺はティオから少し離れてついていく。
扉を抜けてから数段の階段を上がると、ダイニングキッチンとその隣にはリビング。
廊下を挟んでティオ曰く水周りを良くしたバス・トイレが個々に設置してある。
奥の部屋は寝室で、それなりの広さはあるから一緒でいいなら寝られるよと言われた……寝るって同じ寝台に?
「だって、ギルはそんなに大きくないから一緒に寝ても落とされなさそうだし、リビングのソファーだと身体が痛くなるよ?寝室見て寝台のサイズを確認してからでも大丈夫だから」
どうぞと、ティオに促されるまま俺は扉を開く。
後ろから来たティオが壁に触れると明かりが点いた。
ぱあっと明るくなった部屋の中に大きな寝台。
一人で寝るにはかなり大きくないかと思うくらいのサイズ。
ティオはそこまで大柄では無いから何でだろうと不思議に思いながらも、その寝台の端っこを貸して貰えるなら有り難いかなと後ろに立つティオを見た。
「ティオの邪魔にならなけられば、お願いしてもいい?
俺、料理は苦手だけど掃除とか洗濯とかするし、ある程度の家賃が貯まるまででいいから、寝相悪かったら……床でもいいけど」
「ジルは寝相悪いの?」
「一緒に寝てても言われた事はないけど……?」
「……一緒に寝る人がいたの?」
「うん。兄弟五人いたからさ、雑魚寝だったよ?」
一瞬聞こえたティオの声が低くなった気がしたが、ティオを見るとティオはニコニコと笑みを浮かべていた。
「そっか、兄弟なら仕方ないね」
「うん?」
本当にティオの言っている意味がわからない。
けれど、ティオが泊まっていきなと言ってくれて、俺はホッと胸を撫で下ろした。
今夜の夜露は凌げると。
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