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397話
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「甘い匂いがするな」
レヴィが両腕に子供を抱いてキッチンへやってきた。
「アップルパイを作ろうかなって」
「美味そうだ」
『まぁま……』
「ライ、ここは危ないからなママと一緒は後にしよう?な?」
ライがジタバタと手足を動かしていたが、レヴィに言われるとライは大人しくなった。
ちゃんと聞き分けることができるようになってきている。
「ライ、パパたちと遊んでいたらおやつには美味しいのを作ってあげるからね?」
俺が良い子だと頭を撫でると
『ンッ』
コクコクと上下に頭が動き、レヴィと同じ赤茶の瞳がキラキラと輝いた。
俺はリンゴの皮を剥いてコトコトと鍋で煮ていく。
本当は紅玉を使うと歯触りの良いフィリングになるのだけれど。
「ん……程良い甘さかな」
一欠片を口に入れると、柔らかな歯触りが美味しいと、満足しているとヒョウの獣人さんと目があった。
「あの、甘いものが嫌いで無ければ食べてみますか?」
リンゴならまだ剥けばあるし、アップルパイが焼き上がるには少し時間がかかるから、食べるならそのままで食べてもらわなければならないけれど。
「レヴィも味見する?」
「あぁ」
甘いもの好きなレヴィは双子と一緒にいそいそとキッチンの向こうに陣取った。
「えーと、これ皆で一口ずつかな」
スプーンと大小の皿に少しずつフィリングを乗せてレヴィの前に置くと、リルが俺がやるぞと立ち上がる。
もちろん、ヒョウさんへは別のお皿にするけれど。
リルがほらと皿をヒョウさんの前に小さな方の皿を置き、戻ってくると大きな方の皿からフィリングをスプーンで掬い上げて、目を覚ました双子の口にそれぞれ入れてやってから最後の一口をレヴィに差し出す。
ふふ、俺の伴侶たちは今日も仲良しだななんて見つつ足りなくなりそうなフィリングを追加していく。
コトコト火を入れすぎてもいけないからと思いながら、ふとカスタードクリームも合わせたくなり火を止めた。
「どう?甘すぎるかな?」
俺の問い掛けにキッチンの向こうから美味っと言う声が聞こえた。
ヒョウさんだ。
「良かったです。これを使ってアップルパイを作りますのでもし良かったら……でも、もう帰られますよね?焼き上がったら工房にお持ちしますか?」
「おう、いいんじゃねぇか?こいつの工房は聖樹の先だからな散歩ついでに持って行ってやってもいいぜ?」
「ほ、本当に?甘いのは好きで、良かったら材料費を出してでも……」
立ち上がりかけたヒョウさんに頭を振る。
「お口に合うかはわかりませんが、作ってお持ちしますね?リル明日とかでもいいかな?」
「いいんじゃねぇか?」
「じゃあ、明日……」
「なら、玄関の柵は明日納品できるようにして持ってくるからその時にでも!」
そう言うヒョウさんの目は光っていた。
レヴィが両腕に子供を抱いてキッチンへやってきた。
「アップルパイを作ろうかなって」
「美味そうだ」
『まぁま……』
「ライ、ここは危ないからなママと一緒は後にしよう?な?」
ライがジタバタと手足を動かしていたが、レヴィに言われるとライは大人しくなった。
ちゃんと聞き分けることができるようになってきている。
「ライ、パパたちと遊んでいたらおやつには美味しいのを作ってあげるからね?」
俺が良い子だと頭を撫でると
『ンッ』
コクコクと上下に頭が動き、レヴィと同じ赤茶の瞳がキラキラと輝いた。
俺はリンゴの皮を剥いてコトコトと鍋で煮ていく。
本当は紅玉を使うと歯触りの良いフィリングになるのだけれど。
「ん……程良い甘さかな」
一欠片を口に入れると、柔らかな歯触りが美味しいと、満足しているとヒョウの獣人さんと目があった。
「あの、甘いものが嫌いで無ければ食べてみますか?」
リンゴならまだ剥けばあるし、アップルパイが焼き上がるには少し時間がかかるから、食べるならそのままで食べてもらわなければならないけれど。
「レヴィも味見する?」
「あぁ」
甘いもの好きなレヴィは双子と一緒にいそいそとキッチンの向こうに陣取った。
「えーと、これ皆で一口ずつかな」
スプーンと大小の皿に少しずつフィリングを乗せてレヴィの前に置くと、リルが俺がやるぞと立ち上がる。
もちろん、ヒョウさんへは別のお皿にするけれど。
リルがほらと皿をヒョウさんの前に小さな方の皿を置き、戻ってくると大きな方の皿からフィリングをスプーンで掬い上げて、目を覚ました双子の口にそれぞれ入れてやってから最後の一口をレヴィに差し出す。
ふふ、俺の伴侶たちは今日も仲良しだななんて見つつ足りなくなりそうなフィリングを追加していく。
コトコト火を入れすぎてもいけないからと思いながら、ふとカスタードクリームも合わせたくなり火を止めた。
「どう?甘すぎるかな?」
俺の問い掛けにキッチンの向こうから美味っと言う声が聞こえた。
ヒョウさんだ。
「良かったです。これを使ってアップルパイを作りますのでもし良かったら……でも、もう帰られますよね?焼き上がったら工房にお持ちしますか?」
「おう、いいんじゃねぇか?こいつの工房は聖樹の先だからな散歩ついでに持って行ってやってもいいぜ?」
「ほ、本当に?甘いのは好きで、良かったら材料費を出してでも……」
立ち上がりかけたヒョウさんに頭を振る。
「お口に合うかはわかりませんが、作ってお持ちしますね?リル明日とかでもいいかな?」
「いいんじゃねぇか?」
「じゃあ、明日……」
「なら、玄関の柵は明日納品できるようにして持ってくるからその時にでも!」
そう言うヒョウさんの目は光っていた。
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