【ＢＬ】転生したら獣人の世界で何故か肉食獣に愛されています。

301話

今回のカップは全て木をくり貫いて作ったカップで、俺がそれぞれの名前を彫った。
こちらの公用文字はカタカナのため、俺でも書ける。
公文書はまた文体が違うらしいが、俺には必要無いだろう。
「お父さん、お母さんこちらを。リルとレヴィはこれ。ミラは俺と同じカフェオレね？」
それぞれにカップを置くと、銘々に飲み始めた。ミラは少しぬるめにしてやるが、それでも熱いのかフーフーと息を吹き掛ける仕草は愛らしい。
ルスはレヴィの膝の上、ライはベビーベッドだ。
いつもの如く、俺はリルとレヴィの間に座る。
デザートはパンケーキ。
焼くのにあまり時間がかからないから、慌てて作った。
本当は生クリームとかを乗せてあげたかったが、蜂蜜で我慢して貰うがみんなそれでも良いらしい。
そのうちカップケーキでも作りたいかななんて思いながら甘いカフェオレを飲む。
クッキーとかも作れるけれどあまりレパートリーがないし、外部と交流もしていないから……それは俺のコミュ能力が低いからなんだけど……ミトさん以外のレシピを知らない。
この世界でお料理教室なんて無いのかなぁ。
「リクト、何かあったか？」
レヴィが心配そうにこちらを見下ろしていた。
「あ、ううん……お菓子のレシピを増やしたいなって思って……俺、器用じゃないから失敗するかもだけど……だから、誰か教えてくれるひといないかなぁ？」
「俺はリクトが作ってくれる物なら何でも美味いが……リル、この辺りで料理が美味いのは誰だ？」
レヴィが問いかけると、リルは困ったように笑う。
「あまり今までレヴィと一緒に飯を美味いかどうか考えながら食って来なかったからなぁ……リクトの料理が滅茶苦茶美味いとびっくりしたんだよな……」
「そうなんだ、リルと一緒だと食えればいいとしか思ってなかったからな」
それは、ミトさんたちと離れて冒険者になってからなのだろう。
「俺はそんなに上手くないけど、本当に家庭料理しか作れないよ？」
一人暮らしで自炊したくらいの経験しかしていないのだ。
「しかも、適当な味付けになっていたりするのに2人は美味しいって食べてくれるから嬉しいけどね」
「実際に美味いからな」
小さく切り分けたパンケーキをレヴィが口にする。
あまり表情を変えないレヴィの口角が、きゅっと上に上がった気がした。
「だから、こっちにあるかわからないけれど、お料理教室とか行きたいんだけど」
「いいんじゃねぇか？明日ギルド行かなきゃならねぇし、探してみるか」
リルがコーヒーを飲み干してからおかわりだろう立ち上がる。
やった、お料理教室行けるかな。
俺は１つ楽しみができた。