【ＢＬ】転生したら獣人の世界で何故か肉食獣に愛されています。

299話

「ただいまミラ！」
玄関を入ると、ぴょんと人型で足元に抱きついてきたミラの頭を撫でてやる。
「おかえりなさい」
最近のミラは良く人型と獣型を頻繁に繰り返している。
「リクト」
『リクト』
ミラを抱き上げた先では伴侶がこちらを見ている。
「うん、どっちから？」
まだ熊の姿のレヴィが、ちらりとリルを見た。
「じゃあ、リル……来て？」
いそいそと近寄ってきたリルに恒例のただいまのキスをする。
腰を抱かれて上向かされ、明らかな大人のキス。
いや、俺大人だけど。
「っは……お帰りなさい」
かくんと膝が崩れそうになってリルにすがりついたら漸く唇を離してくれた。
「悪いな、獣化しちまうとなかなか抑えが効かなくなっちまうんだ」
リルは足元にしがみついていたミラをひょいと抱き上げてから、俺をレヴィに渡す。
獣化を解いたレヴィはまだ全裸だったが気にしていないようで俺を簡単に抱き上げるとちょんちょんと唇を指先でつついてから触れるだけのキスをした。
「ただいま、リクト」
「お帰りなさい……レヴィ」
「リクト……ミラもちゅーするー」
リルの腕の中でじたばたし始めるミラに、レヴィと顔を合わせるとゆっくりと下ろして貰う。
俺は床にぺたりと座り込んで手をのばすと、リルがミラを下ろしてくれた。
「おかえりー」
「ただいま、ミラ」
首の後ろに手がまわり抱きついてきたミラの唇が頬に触れると、俺もミラの頬にキスを返した。
双子はいつの間にかベビーベットにいる。
「さーて、親父とおふくろは遅くなるだろうし」
「夕飯の準備しなきゃ」
俺はミラを離して立ち上がる。
ルーファスさんとミトさんは外泊をするかもしれないし。
「夕飯は何にしようかな」
久しぶりに焼き魚とか食べたいかも。
そんなことを思いながら立ち上がる。
だんだんと重くなるミラを抱き締めてから俺は食材を確認しにキッチンへ。
「洗い物は俺がやろう」
レヴィが手伝ってくれるのを頼みながら、何が食べたいかリクエストを聞く。
レヴィの大きな手が、鳴れたように洗い物を済ませていくのを見ながら、俺は野菜に包丁を入れる。
茄子の揚げ浸しに、ピーマンの肉詰め。
白身魚のソテー。
たっぷりの粉ふきいも。
パスタはペペロンチーノとカルボナーラ。
リルが双子にミルクをあげてくれるのも安心して見ながら、俺は鼻歌交じりに料理を進めるのだった。