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294話

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「リル、重かったら言って……?」
リルの全身にブラッシングをさせて貰ってから、俺はそのふかふかな毛に顔を埋めている。
猫吸いならぬ虎吸い。
あたたかな太陽の匂い。
「ねぇ、リルのその姿のときはやっぱり肉球から汗をかくの?」
『あぁ、だから暑いのは苦手だな……』
顔を埋めている腹部がリルが喋る度にゆっくり上下する。
「そっか、じゃあ暑いときは涼しくするのに水遊びとかしたいね」
『リクトが裸にならなきゃな。お前の裸を見ていいのは俺とレヴィだけだ』
なんて事を言い出す始末。
「誰も俺のなんて見てないだろうし……心配しすぎ。でも俺もリルとレヴィの裸は刺激的すぎるから……」
つい、獸化しているときは安心しているが、これって全裸なんだよねと思ってしまうと一気に耳が熱くなるのがわかるくらい照れてしまうと、それに気付かれないようにとリルのお腹に顔を押し当てた。
『そのうち、貸し切りで温泉とかならいいだろ、暑いときに温泉もいいが、寒いときはもっといいよな……』
「うん、ルスとライも連れてね……皆で旅行したい」
『温泉じゃなくてもいいけどな』
そんな会話をしながら、またバーベキューをしたいねと言う話になる。
広くはないが、子供たちと晴れた日に屋外でやりたいという話になり、レヴィにも話をしてからと言うことで落ち着いた。
串焼きも美味しかったが、鉄板焼もいいねと言いながらルーファスさんにまたお米とお醤油をお願いしなきゃとリルに言う。
お願いされなくても親父はその辺りは自分で動いていると思うから仕入れや代金は気にするなと笑われて、俺はそれでもルーファスさんは仕事で輸入をしているのだから公私は分けなければと、お願いした。
いくら家族でも勝手に貰うわけにはいかない。俺だって少しは貯蓄できていると思うから。
旅行するにも代金はかかるし、必要なら稼ぐか倹約して切り詰めなきゃいけないかなとリルのお腹を枕にして木を見上げる。
『リクトは真面目すぎる。それがいいところでもあるが』
リルの呟きにそうかなぁ?と、首を傾げた。
パタリパタリとリルの尻尾が揺れている。
あたたかい日差しを浴びながらリルと一緒にレヴィを待つ。
あんなドタバタがあったのにも関わらずリルの側だからか眠気が襲ってくる。
程よくリルとの会話をしたのち、自然と俺はうとうとと眠りにおちていく。
『レヴィが来るまで時間がありるから寝ちまえよ』
というリルの優しい声がした。
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