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288話

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『待ったか?』
風のようなスピードで戻ってきたリルが、ぽとりと咥えていた物を落としてから口を開いた。
落としたのはルス。
首を咥えて連れてきたらしい。
落とされたルスはプルプルっと身体を震わせてからにゃーうっと鳴いた。
トットッと近付いて来たルスが、ピョンと抱き付いて来て、カップを置くとギュッと抱き締める。
可愛い子虎を頬擦りした。
小さな舌でペロリと舐めてくる仕草が可愛い。
「リル、薬草見付けられた?」
『少しな……この辺りにはあんまりねぇかも?』
獣化を解こうと、レヴィに着替えを出して貰っていたリルが顔を上げる。
「そっか、お疲れ様。次はレヴィが行ってくれるみたいだけどレヴィが行くなら今度はリルは残って欲しいんだけど……ダメかな」
リルが服を着る姿を見ながらルスを抱き締めた。
少し苦しいと鳴かれて慌てて力を緩めると、リルはどうした?と、首を傾げている。
「ライとふたりだと、魔獣とか怖くて……頼っちゃうのわるいなって……んっ!?」
リルにお願いをしていたらギュッと抱き締められる。
「おぅ、勿論だ!ルスはどうする?レヴィとさっきとは違うところに行くか?」
ルスは首を傾げていたが、レヴィと言う単語に反応したのだろう、チラチラと俺の肩越しにレヴィを見てからガゥと鳴いた。
「レヴィ、ルスをお願いしてもいい?」
「あぁ、ルスが昼食を食べてから眠くならなければな」
そう言われてそうかと思う。短い間だったけどルスにとっては初めての街の外なのだ。
ハイテンションで駆け回ったから、もしかしたら疲れて眠ってしまうかもしれない。
「じゃあ、ご飯にしてから様子を見てだね……俺も薬草採取したかったけど、また今度だね」
一生懸命薬草の種類は覚えてきたけれど、それよりも大切なことがあるから。
「開けた場所なら俺かレヴィがライを抱っこしながら、ルスを見つつ探せるぜ?疲れたらこうして休めばいいし……リクトも座ってばかりも退屈だろ?よっぽど離れてなきゃさっきみたいに呼べばわかるしな。だから、リクトは必ず俺かレヴィと一緒じゃなきゃいけなくなるが」
リルの提案に俺は嬉しくなるが、ふたりの邪魔にならないかと、今度はそちらが心配になる。
「俺たちの心配はしなくていい。ライは無理だがルスは獣化できているからな……自分の身は自分で守れる」
レヴィにそう言われると、俺は頷いた。
「ありがとう。食事してゆっくりしてから探しに行こうか」
じゃあ、食事の準備かなと俺はまだ湯気の上がる食事を取り出したのだった。
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