【BL】転生したら獣人の世界で何故か肉食獣に愛されています。

梅花

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273話

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馬車から降りると、俺がルスを抱いたまま玄関に向かう。
歩きたいとじたばたするルスに駄目と言い聞かせると、ルスは不貞腐れるようにじと目でこちらを見てから、プイッと顔を逸らした。
「ルス~ル~ス~」
腕の中で呼んでも、ルスはこちらを向かない?ただ、長い尻尾はゆらりゆらりと揺れている。
本気で嫌っているわけではないと言う証なのが尻尾でわかってしまうのだけれど。
可愛いけれどちょっと演技をしてみようと、俺はレヴィと視線を合わせる。
「レヴィ、俺、ルスに嫌われちゃったみたいだから……ルス抱っこしてあげて?」
軽い泣き真似をしながら、ルスをレヴィに差し出す。
「そうか……ルス、ママを嫌いになったか?」
レヴィが優しい表情で話しかけながら、そっと俺と距離をとる。
「そんなことないよな?ママはいつもルスとライのことを好きだぞ?もちろんパパもだ。ほら、ママがルスに嫌われたって泣いてるぞ?」
ちらりと、レヴィがこちらを向くと、ルスもつられてこちらを向いた。
だから大袈裟に顔に手をあてて泣いたふり。
すると、レヴィの腕の中で暴れるように動き出したルスがぴょんと飛び出すとタタタッと俺の足元に駆けてくる。
『マァマ……しゅき』
ズボンの裾を前足でカリカリと引っ掻いてから、抱っこして!と言う風に延び上がってきたルスが、舌足らずな可愛らしい声で喋った。
可愛すぎる!
『まぁあ……!』
俺はルスを抱き上げた。
「ルス、お話もできるの?凄いね」
軟らかなマズルを撫でてから頬を寄せるとペロンとルスに舐められた。
まだまだ小さなルスは虎よりは猫に近いから、めちゃくちゃ馴染みがあるサイズで可愛すぎる。
「ママも、ルスが大好き。おうちの中なら少しは動いて大丈夫だからね」
俺はレヴィと視線を交わしてから歩き出し、玄関の中に入るとそこで出迎えてくれたのは獣化したミトさんとミラだった。
『お帰りなさいリクトちゃん、リルから先にルスの事を聞いたからこっちの姿の方がいいかしらと思って』
「ただいま帰りましたお母さん、いきなりのことで驚きましたが、ミラの経験がありましたので何とか……ルス、えぇと……」
どうやって紹介したものかと言葉を濁すと、ミトさんがクスクス笑った。
『おばぁちゃまよ、ばぁばって呼んで?こっちはミラ……お姉ちゃんかしらねぇ?』
大きな虎の姿に一瞬怯んだが、やがて降りると足を動かしたルスを床に置いてやるとトトトッとミトさんに突進していく。
そして、ミトさんの柔らかい白いお腹の毛にぽすんと突っ込んでから楽しそうに喉を鳴らした。
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