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270話
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「リクト、新しい命にも挨拶してやれよ、きっとお前が元気に成長しろと言えば聖樹はすくすく成長しそうな気がする」
リルの言葉にレヴィが頷いた。
「本当にそうだと思うわ。リクト、聖樹へのご挨拶をお願いしても?」
王妃様のお願いに俺はそんなわけないからしないよと言いかけた言葉を飲み込んだ。
魔法使いで言霊使いでもない。俺の言葉で成長などしないだろう。
そう思いながら既に膝丈になった聖樹に近付くと、膝を折りその細い幹に触れる。
軟らかな木肌。
「初めまして、俺はリクトと言います……」
俺は静かに声を掛けた。
古い聖樹から流れ込んできた記憶の殆どが獣人から話しかけられている所だったからだ。
「新しい命が授かったこと、心よりお祝い申し上げます。今後も多くの命を育み王国に繁栄をもたらしていただけるようお願い致します」
あまり、難しいことは口にはできないけれど、俺が言える範囲の言葉を使って聖樹に語りかけているうちに、聖樹はすくすくと俺の背丈を通り越して多くの葉を付けた。
「マジ?」
いくら、ファンタジーの世界でもこんなことがあるのだろうかと周囲を見回したが、リルもレヴィもやっぱりなとばかりに肩をすくめただけだった。
「聖樹様の健康を祈るなんておこがましいかもしれませんが、子供が欲しい番の間にたくさんの幸せをいただけるよう大きくお育ちください」
そう言ってから離れると、聖樹の葉がざわざわと揺れて返事をしてくれるようだった。
「健康な聖樹になってくれるといいなぁ」
そう呟いたが、リルとレヴィはともかく、王と王妃はぽかんと聖樹を見上げていた。
それからややあって、王様がこほんと咳払いをした。
「リクト、聖樹への祝福をしてくれたことに礼を言う」
「えぇ、ありがとうリクト。」
王と王妃はそう笑う。腕の中の王子はその二人を見上げていた。
「王様や王妃様よりも先に申し訳ありません、とても元気そうな聖樹ですから王子様の兄弟も直ぐにできるかもしれませんよ」
生命に満ち溢れた聖樹は、力強く葉を開いている。
きっとその枝には可愛らしい実が成る事だろう。
それを、想像しただけで心がほっこりとするのだ。
「あら、リクトがそう言うならまたリボンを結んでみるのもいいかもしれませんね?」
「そうだな……」
王と王妃の甘い囁きが聞こえてくる。
この国に繁栄が訪れることだろう。
リルとレヴィに両脇を抱かれる。
あたたかさを感じる陽射しを受けながら幸せに包まれた王宮の片隅で幸せを感じていた。
リルの言葉にレヴィが頷いた。
「本当にそうだと思うわ。リクト、聖樹へのご挨拶をお願いしても?」
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そう思いながら既に膝丈になった聖樹に近付くと、膝を折りその細い幹に触れる。
軟らかな木肌。
「初めまして、俺はリクトと言います……」
俺は静かに声を掛けた。
古い聖樹から流れ込んできた記憶の殆どが獣人から話しかけられている所だったからだ。
「新しい命が授かったこと、心よりお祝い申し上げます。今後も多くの命を育み王国に繁栄をもたらしていただけるようお願い致します」
あまり、難しいことは口にはできないけれど、俺が言える範囲の言葉を使って聖樹に語りかけているうちに、聖樹はすくすくと俺の背丈を通り越して多くの葉を付けた。
「マジ?」
いくら、ファンタジーの世界でもこんなことがあるのだろうかと周囲を見回したが、リルもレヴィもやっぱりなとばかりに肩をすくめただけだった。
「聖樹様の健康を祈るなんておこがましいかもしれませんが、子供が欲しい番の間にたくさんの幸せをいただけるよう大きくお育ちください」
そう言ってから離れると、聖樹の葉がざわざわと揺れて返事をしてくれるようだった。
「健康な聖樹になってくれるといいなぁ」
そう呟いたが、リルとレヴィはともかく、王と王妃はぽかんと聖樹を見上げていた。
それからややあって、王様がこほんと咳払いをした。
「リクト、聖樹への祝福をしてくれたことに礼を言う」
「えぇ、ありがとうリクト。」
王と王妃はそう笑う。腕の中の王子はその二人を見上げていた。
「王様や王妃様よりも先に申し訳ありません、とても元気そうな聖樹ですから王子様の兄弟も直ぐにできるかもしれませんよ」
生命に満ち溢れた聖樹は、力強く葉を開いている。
きっとその枝には可愛らしい実が成る事だろう。
それを、想像しただけで心がほっこりとするのだ。
「あら、リクトがそう言うならまたリボンを結んでみるのもいいかもしれませんね?」
「そうだな……」
王と王妃の甘い囁きが聞こえてくる。
この国に繁栄が訪れることだろう。
リルとレヴィに両脇を抱かれる。
あたたかさを感じる陽射しを受けながら幸せに包まれた王宮の片隅で幸せを感じていた。
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