【ＢＬ】転生したら獣人の世界で何故か肉食獣に愛されています。

251話

「王子様、びっくりしちゃったかなぁ」

長い時間、だっこされていたらそれはやっぱり抱いている方も抱かれている方も疲れちゃうよね？
俺はジャケットを脱ぐと、軟らかい内布で王子様を包み、袖を結ぶと抱っこ紐のようにして王子様を抱く。
はしたないかなぁと思いながらもあやせば、王子様はきゃっきゃっと嬉しそうに笑った。

「あら、リクト……私もそれ使えるかしら」

そっと王妃様が近寄ってくると、俺はジャケットを外してから王子様を落とさないようにして王妃様に抱かせてみる。

「これ、凄く楽ね。今まではちょっと抱くと腕が疲れてしまって抱き続けられなかったのだけど……」
「俺のジャケットですから、絶対に落ちないとは言えないので式典が終わったら似た形の布を作っていただいてはいかがですか？王妃様の大きさに合わせたものの方がいいと思いますが」

俺は、伴侶のふたりみたく膂力がないから、こうして道具に頼らなければならない。
まだ小さな双子だけれど、ミラみたいな大きさになったら長時間抱くのは無理なのだ。
おんぶ紐の方が子供はいいと聞くから、もう少し大きくなったらおんぶ紐にしようと思いながらも、今はまだ目の届く抱っこ紐の方が安心なのだ。
式典だから今回は抱っこ紐も持ってきていなかったから、即席の抱っこ紐の代わりにジャケットをした。

「こほん」

小さな咳払いが聞こえて、俺は王妃様と顔を見合せ頭を下げた。
式典の最中だった。
つい子供の事になると、回りが見えなくなってしまう。
王様が王子さまの名前を告げると、臣下全員がザッと頭を垂れた。

これで式典は終わりなのだ、俺はそっと控えて王子さまを抱っこ紐で抱いたまま王妃様と王様が退出をするのを見送り、それから上位の列席者から帰っていく。
俺もリル達に呼ばれてから扉を出て、一緒に帰ろうとすると何人かの女性達に呼び止められた。

「あの、先ほど王妃様が王子様を抱いていたときに使っていたのは……」
「あぁ、布で包んでから斜めに掛けると両手が使えて様子も見れますから……」
「売っているのかしら？」
「見たことがないのでしょうか」
「ありませんわ」

質問攻めに合いながら抱っこ紐と、おんぶ紐の説明をすると、中の一人が商品化したいと言い出した。
どうやら商家のお嬢様のようで、後日デザインを見てもらいたいのだと言う。
俺に言われてもと、リルを見上げると、いいんじゃねぇかという肩を竦めたジェスチャーか返ってきた。
もう！
とりあえず家の場所を伝えると、近いうちに連絡をしますと言われた。
ふわりと髪に黄色い羽根を飾る鳥の獣人（？）さんだった。