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250話

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式典と言うけれど、ここまで大きな式典になるとは思っていなかった。
何故か俺たち家族はミトさん、ルーファスさん含めて来賓扱い。
しかも、王宮で用意してくれたという正装で最前列にいた。
俺はルスとライがいると丁寧に辞退したのだけれど、何故か偉い人たちは他人の話を聞かない。
あれよあれよと着替えさせられて今に至る。
俺の意見は全く聞かれず、悔しいからおめかしした双子や伴侶の姿をスマホに収めた。
ミトさんに貸してと言われてスマホを奪われ、5人の家族写真やミトさんルーファスさんも撮らせてもらい、さながら撮影会みたくなったのはご愛嬌。

「なぁ、本当にこれ俺欲しいんだけどな……すまほっつったっけ?」

リルが画面を覗き込んでくる。

「うん。でも俺も作れないし……分解されちゃうと今まで入れていたデータが消えちゃうかもしれないしさ……だから」
「わかっている。でも幼い双子の姿がこうやって残るのは嬉しいな」

レヴィもそっと近寄ってきた。

「これを元に肖像画とか……書いて貰うって話をちょっとしたよね?折角正装してるからこの姿でね?」

楽しみだなぁなんて笑いながら、式典が始まるのを待つ。
双子の機嫌も悪くはならず、ゆっくりと式典は進んでいった。
その最後になりかけて王子様に王様から名前を授ける直前、今まで静かにしていたライがぐずり始めた。
式典に赤子の声が響き、周囲の視線がこちらに注がれるのがわかった。

「レヴィ、ライを部屋の外に出すよ……」

レヴィに囁くと、レヴィは静かに頷いてライを渡してくれた。
邪魔にならないように腰を屈めながら広間を出ようとした瞬間、今度は王子様が火が付いたように泣き出した。
王子様を抱く乳母だろうか、困ったようにあやすも泣き止む気配はなく。
続いてルスもぐずり始めたようだ。
ルスを抱いたリルがこちらに来る。
それにレヴィも着いてきた。
王様が何か手を振ると、王子様を抱いた女性が壇上を降りこちらへと向かってくる。

「悪いがリクト、抱いてみてくれ」

壇上からの王様の言葉にライをレヴィに託すと、王子様を受け取った。
すると、声が枯れるほど泣いた王子の泣き声が静かになり、やがて腕の中で眠り始める。

「王子様……」

壇上を見上げると、王様が大丈夫そうなら席に戻れと手で示し、控えていた侍従の一人に促された。

「王様がそのままリクト様は壇上へ、いらして欲しいとの事です」

そう告げられると、仕方ないかと俺は静かに息を吐き出して王子様をしっかりと抱いて壇上へ向かう。
この場合にはそれ以外は選択できる状況じゃなかったから仕方ないよね。
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