【BL】転生したら獣人の世界で何故か肉食獣に愛されています。

梅花

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246話

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「リクト入れ」
開いた扉の中に王様は足を踏み入れる。
広い広い部屋の中、正面には大きな寝台があり、そこが寝室だとわかっている。
王妃様を大切そうに寝台に横たえた王様は俺をちらりと見ると手招く。
「子を」
渡してほしいと言うのだ。
俺はそっと王様に近寄ると子供を手渡す。
「王様、少し濡れた布で身体を拭くのと柔らかい布で包んであげませんと」
そのまま王妃様の横に子を置こうとする王様に声を掛けると、はっとした表情で手を上げた。
ざわざわとしたざわめきが消えて、侍従長が静かにたらいの中にお湯をはったものと、見るからにふかふかなタオルをもってやってきた。
「リクト頼む」
「はい」
俺はタオルを濡らしてかたく絞りそっと小さな赤子の身体を拭いていく全身から柔らかな光を放つような金色の髪はまだ仄かに生えるだけ。
パタリパタリと揺れる尻尾は王の証のようで、可愛いくても次代を受け継ぐのだなと納得させられる。
「これで大丈夫かと」
全身を拭くと、気持ちよさそうに眠り始めた赤子を、王様がそっと王妃様の傍に置いた。
「可愛い……本当に私たちの子なのね……」
横を向き、子供を見つめる王妃の表情には慈愛しかなかった。
それを見ていると、遠くで子供の鳴き声がした。
「えっ?」
振り向くと、リルとレヴィ、双子は部屋の外でこちらをうかがっているが、足を踏み入れることはできていない。
ここ、そう言えば寝室だった!
王様に着いてこいと言われて、子供も抱いているしと踏み込んでしまったが、ここは王様たちの居室であり、本来ならは限られた者しか入ることができない場所。
だから、ふたりも入ってくることはできないのだ。
仲良くても、一線は越えない。
「王様、すみません俺の子が泣いているみたいで……少しだけ……」
「あぁ、行ってこい……後で頼み事がある」
そう言われて一瞬首を傾げた。
頼み事?命令とかではなく?
そう思ったのだが、俺はつい双子の鳴き声が気になりそっちへ意識を向けていた。
「王妃様、お疲れでしょうからお休みください。では」
ぺこりと頭を下げて俺は寝室を後にする。
「ごめん、ルスもライもどうしたの?」
いきなりぎゃん泣きのふたりは俺が頭を撫でると瞬時に泣くのをやめる。
お腹が空いた訳でも、他の事でもない。
何があったのかと思うくらい不思議な現象だった。
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